Monthly Archives: 6月 2013

Mellow Tunes ~ Vol.49【standards】

これまでも色々と紹介してきていますが、かつて70年代後半~90年代の音楽シーンを牽引してきた大物アーティストが、次から次へとJAZZアメリカン・スタンダーズ作品を収録したアルバムを、還暦を過ぎてからリリースするケースが最近になってなんだかやけに増えてきているような気がします。

以前からも主張しているように、やはりかつて一時代を築いたアーティストやシンガーといった人たちは、老いても現在の自分をどう表現すればその「魅力」を伝えることができるのかを、とてもよく知っているなあって、ちょっと感心してしまうこの頃です。

A Time For Love
かつて「ブラック・コンテンポラリー」とカテゴライズされたフィールドでたいへん人気のあった元「LTD」というR&Bグループのリードヴォーカリストとしても有名な Jeffrey Osborne(ジェフリー・オズボーン)も、30年以上に渡るキャリアのこのタイミングで、スタンダード作品を散りばめたアルバム『A Time For Love』を、かつてプロデュースを手がけていたジョージ・デューク(故人)と再び組んでのリリースとなっています。

過去記事でも何度も紹介しましたが、イーグルスグレン・フライが発表した「After Hours」に近い雰囲気の作品で、今年に入ってすぐ静かにリリースされていたようです。

グレンの歌うThe Shadow of Your Smileもすこぶる渋くてよいですが、かつてのブラコン・スターのジェフリーのヴァージョンもなかなかの味わいです。ちょっとコブシを効かせたような独特のヴォーカルスタイルは健在で、バックに流れる控え目なギターは、ポール・ジャクソン・Jr によるものです。相変わらずの Smooth なギター・プレイです。



Jeffrey Osbourne / “Shadow of your smile” (album: A Time For Love – 2013)

 

こういった実力派と言われたアーティストのスタンダーズへチャレンジした作品が、今後も多くリリースされてくるような気がします。その背景にあるのは、きっと『美しく、耳に馴染むメロディ』への回帰といった現象があるんじゃないでしょうか。そんな気がしてなりません。

アヤメの記憶 【モノローグ】

今年の梅雨に、自宅の庭のアヤメが咲いた。
僕自身はここ2~3年ほど、お店の開業から撤退へと相当に濃密で凝縮された時間を過ごしていたので、好きなアヤメを愛でる余裕もなかったから、もしかしたら昨年も一昨年も咲いていたのかも知れない。いや、でも好きな花が咲いているのに気付かないほど鈍感でもないから、たぶんやっぱり数年ぶりの開花だったのだろう。

「咲かない年が何年も続くときもあるんだよ。だから咲いたときは、ほんとに嬉しいんだよ。」「人間と同じ。」
そう教えてくれたのは、6年前に他界した母だった。
亡くなるまでの約8年間に及ぶ、腎不全による人工透析生活に入る以前は、僕ら一家が成田市内からこの霞ヶ浦周辺の水郷地域に引っ越したのをきっかけに、何度かアヤメの本場の潮来や千葉の佐原周辺の「あやめ祭り」や「水郷水生植物園」に連れて行ってあげたものだった。

 

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6月生まれの母にとって、「アヤメ(花菖蒲)」はとにかく特別な存在の花だったようで、アヤメの話をし始めるともう止まることを知らなかった。それくらいアヤメが好きだった。
病状が悪化するにつれ自力歩行が困難となり、いよいよ車椅子生活となった年の「梅雨」を迎えるのが寂しくて仕方ないと、時折訪ねた介護施設の部屋で力なく語っていた。

当時成田空港に勤務していた僕は、その年の母の誕生日が来る前の週、早番勤務の会社帰りに、10種類は越えていただろうか、とにかく出来るだけたくさんの品種のアヤメを水生植物園の売店で買って、自宅に持ち帰った。記憶が定かではないが、その日の夕方だっただろうか、それらを中くらいの5つか6つあるプランターに川砂だか山砂を使って、等間隔で三株ずつ植えていった。当時小学生だった長男も、不器用なりに一緒に植え込みを手伝ってくれた。
翌日、僕はそれらを全てワゴン車に積み込んで、埼玉県内の実家からほど近い母がお世話になっている施設へと、運び込んだ。正確には全部ではなく、積載スペースの関係で、プランターが一つだけ自宅に残ったのだった。

周りを田園で囲まれた快適な施設ではあったけれど、大人の足ですくっと立たなければ窓から景色を望むことは難しい。そんな事情だから、週に三回の人工透析に病院に出かけるときくらいが、病状が進行しつつある母にとっては唯一外界と接する機会だった。
実を言うと、「ミニ菖蒲園を作ってやろう」と、僕はずっと考えていた。幸いベランダにそれなりのスペースがあったので、そこにアヤメがところ狭しと植え込まれたプランターを運び入れ、介護用のベッドから見える角度で配置した。
「もう、アヤメは切花か造花でしか見られないと思ってたけど.. ありがとう」と言って、母は泣いて喜んでくれた。窓の外では、これから咲こうとしている沢山の若く元気な膨らみかけた花芽たちが、降り注ぐ雨の雫を身にまとい、日々衰えゆく母とは対照的な姿を見せていた。

翌年の春に、二度目の「ミニ菖蒲園」を見ることなく、母は亡くなった。
「戒名をお付けするにあたり、故人にゆかりのあるものはありますか?」と、菩提寺の住職に尋ねられた。兄妹にも納得してもらった上で僕の希望を伝え、花や草木の中でもとりわけ「アヤメ(花菖蒲)」が大好きな人だったので、戒名に「蒲」の一文字を入れてもらった。
『蒲帆靖寧信女』。好きだったアヤメが咲き誇る水郷地域をイメージさせる、そんな素敵な戒名を戴いた。

「ミニ菖蒲園」は、その後遺品を整理に訪れた際、水やりをしてくださっていた施設の職員さんたちに分けて引き取ってもらった。なので、それぞれが今はどうなっているかはわからない。ただあの日、車に積みきれずに自宅の庭に置かれたプランターから、綺麗な淡い紫色のアヤメが、今年も咲いた。

この季節、アヤメを見ると、母の記憶ばかりがよみがえる。

「ありがとう」って、なんだかわけもなく呟いてみる。

 

梅雨時の風景

小さいながらも、ウチの庭にもこの時期雨の雫が似合ういくつかの生き物たちが、元気な表情を見せています。

お休みの今日は、植木屋のケンちゃんがモミジ移植の下見のため、仕事帰りに立ち寄ってくれました。

もうすぐだなあ。

 

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Masterの今これが聴きたい ~ Vol.9【Rock With You】

いつかは取り上げたいと思っていてもなかなか機会がなかった、King of POPマイケル・ジャクソンの登場です。

僕が高校生になったばかりの頃だったと記憶していますが、あのモンスター級の売上を誇るアルバム『Thriller (スリラー)』には及ばないものの、その布石となった前作『Off The Wall』には、本当に度肝を抜かれました。なぜだか小学生の頃から洋楽ばかり聴いていたヘンテコな子どもだった僕は、その後の成長に伴い徐々に黒人ミュージシャンの作り出すサウンドに心を奪われ傾倒していくわけですが、元々はJAZZ畑のあの大物クインシー・ジョーンズがプロデュースしたこのアルバムには、ひっくり返るほどの衝撃を受けました。この作品後にクインシーがプロデュースすることになる多くの作品にも大々的に起用され、その名を世界に知らしめた英国出身の白人「Rod Temperton (ロッド・テンパートン)」により作り出される洗練されたメロディーやアレンジに、「黒人の人たちがやる音楽はなんだかずっと先を行っているぞ」と強く意識することになりました。
ロッド・テンパートンに関しては、近いうちに特集でもしてみようかと考えています。

 

MJ

彼の代名詞でもある 「Moon Walk」 以前ではありますが、マイケルがたぶんもっとも輝いていた時代の、永遠の輝きを放つナンバーだと個人的に思う作品のひとつ。それが『Rock with You』であり、アルバムタイトル曲でもあるOff The Wallなんだと思うのです。
PVを見ればお分かりのように、見ているこちらがなんだか Happy になるくらい、実に楽しそうに歌っているではありませんか。「この頃のままでよかったのに・・」って、古いファンはみんな口を揃えて言いますよね。もちろんいろんなご意見はあると思いますが。

 


Michael Jackson / “Rock With You” (album: Off The Wall – 1979)

キラキラに輝いてますね。いい時代でした。

 

_____ 追記 _____

以前にルーサー・ヴァンドロスの記事を書いたときもそうだったのですが、今回ただ聴きたくなっただけで何にも気にせず、記事を書いてしまいましたが、先ほどWikipediaでチェックしてみたら5日後の「6月25日」は奇遇にもマイケルの命日でした。偉大なスーパー・スターが天に召されて早4年の月日が経とうとしています。失ったものの大きさが、世界というより地球規模というところが凄い存在の人でした。

合掌

Masterの今これが聴きたい ~ Vol.8【雨のウェンズデイ】

『水曜日』の今日は、一日中雨降りの予報。

それなら、聴きたい一曲といえばこれしかないでしょう。

若い世代の人たちに、ぜひ聴いてもらいたいなあと思うアルバムです。

 

かつてのカフェの窓辺より 【雨の午後】

 

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a long vacation


大滝詠一 / “雨のウェンズデイ” (album: A LONG VACATION – 1981)

 

作曲は大滝詠一さん、作詞は松本隆さんの「はっぴいえんど」時代からの伝説の黄金コンビによる不朽の名曲ですね。
もう10年以上も前に、松本さんのブログに、彼が作詞した山下達郎氏のある曲についてコメントしたら、ものすごい丁寧な解説付きのお返事を頂戴したことがありました。「言葉を大切にそして繊細に紡ぎ出す偉大な作詞家というのは、ただの一読者に対しても真摯に答えてくれるものなのか・・」と、とても感銘を受けました。

名曲には名曲たる所以(ゆえん)があるものです。

ああ、ほんとにいつの時代に聴いても素晴らしい作品です。