Daily Archives: 2017/09/11

AC Tunes ~ Vol.59【Walter Becker – R.I.P.】

なんてことだ、米国と言わず世界中のミュージシャンやアーティストの多くが憧れ続け、そして20世紀の音楽史上多大な影響を聴く者に与え続けた、偉大なバンド(ユニット)である『Steely Dan』「Walter Becker」(ウォルター・ベッカー)が、67歳で9月3日に天に召されてしまった。

 

 

9月に入ってのあまりに急な訃報に、学生時代からの音楽好きの友人KUBO氏と共に、なんだかこの現実にお互いうまく対応できず、戸惑いを隠せないでいる。かねてから「自分たちの完璧なサウンドはライブでは再現不可能なので、コンサートをやることはない」と断言していた彼らのLIVEを現実のものとして見る為に、僕らのような世界中の熱心なファンは、バンドの絶頂期を経て本人たちのLIVEへの意識が変わるまでに、それから10年以上の歳月を費やすことになった。やがて社会人となり家庭や子供を持った後に、武道館で見たウォルターの姿に、まさに「ギター職人」という印象が強く残ったのを記憶している。折りしも今月下旬に「Nightflyers」と名付けたバンドを伴って来日予定のフェイゲン氏だけれど、幾つかのメディアでの追悼声明を正式にリリースしたものの、それはもう想像を絶するほどに、大きな心の痛手となっていることだろう。
[ウォルターの逝去した9/3以降の北米でのLIVEツアー、そして来日公演も中止が決定したそう。フェイゲン氏の急病ということだけれど、心配だ…]
 

Vocalを務めることから、相方の「Doanld Fagen」(ドナルド・フェイゲン)の存在の方が昔から話題になりがちとはいえ、スティーリー・ダンの音楽は「Becker/Fagen」のどちらが欠けても成り立たないのは、古くからのファンなら皆納得の事実だ。技術的なことはともかく、ウォルターのギターとベースから繰り出される音は、他の誰もが真似のできない独特の、そうまさに「ONE & ONLY」のサウンドだった。高校生の頃に初めて出逢った彼らのその「音世界」に衝撃を受け虜になり、社会人になってもう人生を折り返した今となっても、彼らの音楽は僕らにとっては宝石のように、いまでもキラキラと輝きを放つ。フェイゲンがソロ・アルバムを出す際も、ウォルターの名前はクレジットされていなくても、間違いなくいつもアイディアを共有していたんだろうと思う。そのくらい、互いにとって欠かすことのできないパートナーであったはずだ。

 

 

どの曲を取り上げようかもう何日も悩んで、なかなか決まらずにいたけれど、やはりROCKでありながらJAZZのように難解な転調を繰り返し、すべての聴く者を虜にした歴史的名盤『Aja』からタイトル作品『Aja』を取り上げないわけにはいかない。この8分を超える美しくも壮絶な狂気を包括する楽曲を、過去にいったい何度ターン・テーブルの上でリピートしたことだろうか。もちろんそれはレコード盤からCDへ、そしてiPodになってからも同じ作業を繰り返している。思えば、収録作品同様に評価を高めた「アジアを象徴する」ジャケット写真に起用された、「山口小夜子」さんも10年前に他界された。こうして時代は移ろっていくものなのだろうか。なんだか、ちょっともの悲しい。

 

Steely Dan – “Aja” (album: Aja – 1977)

 

そしてもうひとつ、「Aja」と同時期に録音が進められた、彼らとしてははじめての映画のテーマ曲である『FM(No Static at All)』を聴きながら、亡きウォルターへ哀悼の意を表したい。
うねるベース・ライン、緊張感を増幅するようなイントロのギターの響き、どちらもウォルターが紡ぎ出す音の魔法と表現しても過言ではないだろう。

2年前の秋に、NYはマンハッタンの「エンパイア・ステイト・ビル」で、アンテナが設置され電波塔も兼ねる同ビルの「FM放送開始50周年記念事業」に於いて、FMラジオ局から流れる彼らの楽曲『FM』と、ビルを美しく照らし出すライト・アップがシンクロしたイベントが開催された。(詳細過去記事参照)

 


Steely Dan – “FM(No Static at All)”
Empire State Building Steely Dan Light Show (2015 in NY)

 

折りしも、今日は決して忘れてはいけないあの忌まわしき「アメリカ同時多発テロ」が発生した『9.11』から、ちょうど16年という月日が経過した。16年前の今日、空港勤務だった僕らが送り出した米国行きの自社機を含め他社の航空機も、テロ発生直後に発令された「非常事態宣言」と連邦航空局の命令によりアメリカ国内の民間航空路の封鎖の影響で、大半が成田にリターンしてきたのを、まるで昨日の出来事のように鮮明に記憶している。海の向こうの出来事とはいえ、明らかにパニック状態に陥った。今となっても、思い出すだけでも身震いがするようだ。

ウォルター・ベッカー氏、そして16年前のあの日、彼の地でテロの巻き添えとなってしまった多くの犠牲者の方々、どうか安らかにお眠りください。

R.I.P.