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Mellow Tunes ~ Vol.166【Diana Ross / Julio Iglesias】

いつもご訪問ありがとうございます。
先般の事故で、永年僕の足となって支えてくれた愛車を失い、だいぶ落ち込んでおりましたが、ようやく気持ちの整理もついたところで、「Mellow Tunes」も再開です。

それにしても、あっという間に季節が春から初夏へ移行中といった印象が強いのは気のせいでしょうか。それはそうとして、「菜の花」の黄色も、森や林の木々たちの新緑も日に日に緑の濃さを増してきています。数日前に隣町の床屋さんに散髪に向う途中、前を通りかかった森林公園内の緑の濃さに吸い込まれるように、樹木などが発散する化学物質「フィトンチッド」(phytoncide)を浴びてまいりました。ちょっと痛んだ心身には、ちょうどよい治癒効果があったような気がしています。これは有難い。

 

 

 

 

当サイトにもう一つシリーズを追加しようかどうかと以前から悩んでいるのが、いわゆる「Duet」もののご紹介なんですね。「Mellow Duet Tunes」なんてのも悪くないかも、とずっと考えていました。
以前に音楽プロデューサーでありR&Bミュージックの権威でもある「松尾潔」さんもラジオ番組で仰ってましたが、「Duet」とりわけ男女による「Duet」作品というのは、Black Music (黒人音楽)と総称される音楽の中でも「R&B/Soul」のカテゴリーにおいて、現在も過去もその作品数の存在が突出しており顕著であることは、皆さんよくご存知の事実です。メッセージ色の強いジャンルの例えば「Rock」などでは、あまり見かけることがないように、そもそも「R&B/Soul」という音楽は、男女の恋愛模様であったり「sensual(センシュアル)」(官能的)な内容を表現したカテゴリーと言い切ってしまってもよい、そんな立ち位置にいる存在なわけです。「好きだ、嫌いよ」なんて非常にシンプルな内容のリリックは、母国語が英語ではない世界中のリスナーにとっても、いつの時代も分かり易く訴えることが可能で、故に古の時代から「男女Duet」による「名曲」と後に呼ばれるスロウ・バラッドを中心とした「LOVE SONG」の数々が沢山生まれ、時代が変わっても多くのカヴァー作品が後を絶たないのは、そういった「ジャンル」というか「カテゴリー」に起因していることに他なりません。
先般来日して日本中を熱狂させた『Bruno Mars』もそうですが、聴衆に訴えるものが決して難解でなく「分かり易い」というのが、R&Bも含めたPOPミュージックの本来あるべき姿なのだと、改めて気付かせてくれるよい見本なのではないでしょうか。

 

いつものように前置きが長くなりましたが、今回ご紹介したい男女によるDuet作品はこちら、Diana Ross(ダイアナ・ロス) / Julio Iglesias(フリオ・イグレシアス) の大御所二人による、1984年にリリースされた、それはそれはスケールの壮大な「Love Ballad」であり「愛の賛歌」と、当時絶賛された作品『All of You』です。古くからの音楽ファンの方であればお分かりのように、ダイアナ・ロスは言ってみれば「米国の”美空ひばり”」であり、フリオ・イグレシアスはスペイン人ですがスペイン語圏諸国を中心に、“史上最も多くのレコードを売ったアーティスト”の称号を持ち、女性ファンを熱狂させ“世界の恋人”と呼ばれるほどの人気アーティストであることは、周知の事実です。

米国人プロデューサーの「Richard Perry」の下、作詞は「Cynthia Weil」作曲は「Julio Iglesias (本人)と Tony Renis」により製作された本作品は、まずは先行して1984年8月にリリースされたフリオの「英語」によるアルバム『1100 Bel Air Place』の1stトラックとして収録されました。1ヶ月遅れでリリースされたダイアナのアルバム『Swept Away』にも当然本作品は収録され、「ダイアナのアルバムに、何故フリオが?」と、接点が見あたらないそんな二大アーティストの共演に、世界中が驚かされましたが、作品がシングル・カットされた数ヵ月後の12月には、もう世界中がこのベタベタな「愛の賛歌」に魅了され、作品は空前の大ヒットとなりました。
今になって振り返れば、当時スペイン本国やメキシコ等々スペイン語圏では圧倒的な人気を誇るフリオの、本格的な米国での成功を狙ったマーケティングやプロモーションであったのは明らかで、英語詞による作品群も、少々人気に翳りの見えてきたダイアナとのコラボレーションも、お互いにとって成功した事例となりました。

かくいう自分も、当時大学3年だったと記憶してますが、当時通い詰めていた渋谷の奥の方の宇田川町にあった「TOWER RECORDS」の旧店舗で、この曲を店内で初めて耳にしたときの衝撃は今でもはっきりと覚えています。世界中のマダムたちが、「フリオさま~」と追い回している理由がよく理解できました。ラテン女性たちが好むルックスはもちろん、とにかくあのビブラートの利いた「震える声」が、容赦なく耳と脳を刺激するのには自ら驚きました。ダイアナはもう説明不要の安定感と、Marvin Gaye(マーヴィン・ゲイ)とのDuetで、Soul Classics の金字塔である『You are Everything』以来の素晴らしいDuetと言っても過言ではない程の、圧倒的な存在感を見せつけ、まさに女王の貫禄でした。

 

Diana Ross & Julio Iglesias – “All Of You”

 

僕と同年代かそれ以上の洋楽好きの方々であれば、このPVは記憶にあるかもしれませんが、現在共に74歳となるお二人が「34年前」のちょうど「40歳」の時にリリースされた作品だけに、当時のPV(MV)によくありがちな、キャストが突然踊り出すようなミュージカル仕立ての演出による映像作品は、他のアーティストのPVでもとても多かったような印象が強いですね。

古きよき時代を回顧するような映像ですが、フリオのアルバムのタイトルが『1100 Bel Air Place』だけに、ビバリー・ヒルズ、ホルムビー・ヒルズ、ベル・エア、3つ合わせて「プラチナ・トライアングル」といわれるLAの高級住宅街の中でも、群を抜く超セレヴしか居住することを許されない「Bel Air」地区での、毎日パーティーばかりしているようなリッチな人々のライフ・スタイルを意図した演出だったわけですね。過去若い頃にこのエリアにクルマで行ったことがありましたが、「HONDA 」のコンパクトカーでノロノロ運転していた僕の後ろには、米国映画の中でよく見かけるLAPD(ロス市警)のパトカーが、しばらく追走してきたのは言うまでもありません。