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Mellow Tunes ~ Vol.168【Daniel Caesar】

いつもご訪問ありがとうございます。
事故以来、ちょっと仕事以外でキー・ボードを叩くのがシンドイ時があって、なかなか更新できずにすみません。
まもなく新緑の5月も終わろうとしていますが、例年よりも早い春の到来からすべてが前倒しで、個人的には心底嫌いな暑い季節が、ちらちらとすぐ目の前に見え隠れしているような、ここ最近の関東地方の気候です。暑い季節には、正直なところ「Mellow」な音楽は不向きであり、やはり肌寒い秋から冬にかけてが「旬」であり「Best Season」であることは間違いありません。「早く秋が来ないか」と、もうそんなことを考えている不届き者です。
日中はもう夏のようですが、夜明け前などは気温もぐっと下がって、朝焼けなどが美しい時期でもありますね。

 

 

さて久しぶりに更新する今回の「Mellow Tunes」ですが、昨年あたりから北米のみならず世界中から大変な注目を集めている、カナダはトロント出身のR&B界期待の New Star「Daniel Caesar」(ダニエル・シーザー)のご紹介です。ジャマイカ出身のゴスペル・シンガーを父親に持ち、幼少の頃からクワイア(聖歌隊)で鍛えられたダニエル・シーザーの音楽的なバック・グラウンドは、特にスロウ・ジャムにおいて顕著となり、極上のファルセットを伴ったその卓越したヴォーカル・スキルは、他を圧倒するほどのものがあります。昨年(2017年)、満を持してリリースされたスタジオ録音アルバムとしてのデビュー・アルバム『Freudian』は、音楽全般とりわけ「Black Music」に大変造詣が深くまたアーティストらへのリスペクトも決して忘れることのない、偉大な「Barack Obama」(バラク・オバマ)前大統領の「Favorite Song List 2017」に、作品がリストされていたことは、今でも語り草になっているくらい。オバマ前大統領は、二年前にも「プリンス」逝去にあたり、公式に出した追悼コメントに、世界中の音楽愛好家たちがその慈愛に満ちた言葉に感銘を受けたものでした。

勢いに乗ったダニエルのアルバム『Freudian』は、記憶に新しい今年1月末に行われた「第60回グラミー賞」において、最優秀 R&B アルバム賞へ、そして世界を驚愕させたシングル作品『Get You』最優秀 R&B パフォーマンス賞へと、堂々2部門においてグラミー賞にノミネートされました。
結果はといえば、過去記事で特集したように、まさに時代の寵児となった「Bruno Mars」(ブルーノ・マーズ)による6(7)部門制覇となったことは、皆さんの記憶にも新しいことでしょう。ブルーノの独壇場の舞台裏では、こんな作品もひっそりとノミネートされていたわけです。

「次世代R&B」を体現するアーティストの一人として注目を集める、まだ若干25歳のダニエルが、アルバムのリリース以前に先行して放った出世作『Get You』は、世界を震撼させるだけの楽曲であり、Lyricの内容はR&Bですから当然の如く「sensual(センシュアル)」(官能的)ものとなっておりますが、PVで堪能できるように、それはそれはアンビエントな世界を繰り広げています。かつての80-90年代でいうところの、まだまだ現役の偉大なアーティスト『SADE』で代表されるようなカテゴリー「Quiet Storm」の再来とも言えるのかなと、そんな印象が強く残りました。
とにかくこのグラミーにノミネートされた楽曲の特筆すべき点は、なんと言っても「音数」の少なさではないでしょうか。リズム隊の「ベース」「ドラムス」そして控えめな「ギター」によって構成され、あらゆる無駄な音を削ぎ落としたシンプルなサウンドに、あまりに美しいファルセットのヴォーカルが絡みつくように、静かに静かに独特のグルーヴがうねり続ける、そんな出色の出来の作品となっています。一見すると、ジャマイカの血の影響か、レゲエでも歌い出しそうなルックスですが、アルバムを通しで聴くと、この相当な実力に裏づけされたヴォーカル・スタイルそしてテクニックに、もう何十年も「Black Music」を聴き続けてきた僕も圧倒されっ放しでした。

 


01. Daniel Caesar – “Get You” ft. Kali Uchis [Official Video]
02. Daniel Caesar & H.E.R. – “Best Part”
(Both Songs from the album: Freudian – 2017)

 

今年3月に初来日予定だったダニエルの公演は、残念なことに中止となってしまったようですが、この人の今後の活動に注目したいところです。

以前からずっと申し上げているように、当ブログは最新の作品を中心に且つタイムリーに紹介するサイトではありません。たとえ「古い作品」であれ「すごく古い作品」であっても、僕自身が「これは素晴らしい」と感じたものを、その時点でご紹介していくというスタンスに、これまでもこれからも一切変わりはありません。音楽との付き合い方って、流行だけを追うよりも、そんなのんびりとした付き合い方の方が、絶対楽しいってものです。
人生を変えてしまうほどに、自分にとって大切な音楽に出逢うのに、「早い」も「遅い」もないのです。