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Mellow Tunes ~ Vol.96 【Best Mellow Tunes 2015】

12月に入って最初の更新となりますが、例年この時期になると決まって書いてしまうのが、「一年があっという間に過ぎていってしまう・・」といったことです。若い世代の方々はさておき、年齢を重ねる毎にその思いが強くなるのは、いったいなぜなんだろうと思いませんか。まあ、それが歳を取るということなんだと言ってしまえばそれまでなんでしょうが。

さて、久々の『Mellow Tunes』の更新ですが、今年はなんだか「これだな」と思える楽曲(作品)に巡りあえずに終わってしまうのかと漠然と思っていたところに、この暮れになってようやく「そうそうコレなんですよ」という作品が、ようやくフワリと空から舞い降りてきました。

Return Of The Tender Loverここのところ忙しくて音楽業界の動向をタイムリーにチェックできていなかったので、つい数日前に僕の敬愛する Babyface(ベイビーフェイス)こと Kenneth Edmonds がこのクリスマス Holiday Season に合わせてニューアルバムをリリースしたのを知りました。しかもタイトルはなんと『Return Of The Tender Lover』。古くからの彼のファンならお気付きの通り、1989年にリリースされ世界中を席巻したあの名アルバム『Tender Lover』への「回帰」としか捉えようのない、ストレートなアルバムタイトルにまずはびっくり。内容はといえば、そう80年代後半から90年代にかけて、スーパー・プロデューサーコンビの相方でもあった L.A.Reid (現EPIC社のCEO)との絶妙なコンビネーションで当時のブラック・コンテンポラリー・ミュージック隆盛の時代を牽引した、あの頃のサウンドと言い切って問題のない音作りになっています。クレジットには『ft. El DeBarge』の名前を見つけることのできる作品”Walking on Air”など、80年代のBlack Contemporary Musicをシャワーのように浴びて育った世代にとっては、まさに必聴の厳選された珠玉の9作品です。思うに、Babyfaceの狙いはアナログ盤のLPレコードしかなかった時代の、「アルバム全曲を通した一つの作品」として聴いて欲しいという想いがあるのではないでしょうか。1曲ごとにバラ売りのデジタル配信が普通の現代の音楽との付き合い方に対する、彼なりの回答なのかと思えてなりません。

ニュー・アルバムリリースと同時にWorld Tourを敢行中で、つい最近来日を果たしたジャネット・ジャクソンのケースもそうですが、Babyface & L.A.Reid と同時代に大活躍したこれまたスーパー・プロデューサーコンビの Jimmy Jam & Terry Lewis による久々のプロデュースということで大変盛り上がっている様子で、現代はカルチャーも含めまさに1980-90年代のサウンドが旬なのかもしれません。理解しやすいメロディー、美しいコーラス等々、今回の Babyface の新作がそのことを端的に物語っているように思えてなりません。
Lead Singleとしてリリースされた “We’ve Got Love”もどこか懐かしくワクワクするサウンドで、相変わらずのメロディ・メーカーっぷりにノック・アウトされそうです。

 


Babyface / “We’ve Got Love” (album: Return Of The Tender Lover – 2015)

 

おそらく日本人の中で最も Babyface をこよなく愛しリスペクトしているであろうと想像に難くない、僕の敬愛する音楽ライターでありプロデューサーでもある「松尾”KC”潔」さんだったら、自身のラジオ番組で最新アルバムの中からどの曲を紹介するのかなとふと思いたち、タイミングも良かったので今日久々に「松尾潔のメロウな夜」(NHK-FM)を聴いてみました。なんと答えは「やっぱりこの曲」でした。そんな「メロウな巨匠」も納得の楽曲、『I Want You』はストレートなタイトルも潔いですが、Babyface の実兄のメルヴィン(Melvin)とケヴォン(Kevon)そしてキース・ミッチェル(Keith Mitchel)によって結成されBabyfaceの黄金期と時を同じくして大活躍した『After 7』をFeaturingした、美しいハーモニーが堪能できる素晴らしい作品に仕上がっています。(翌週のFM番組放送後記で、松尾さんがこの作品の詳細について触れていらっしゃいますが、さすが巨匠なんでもご存知ですね。)
同作品は『After 7』名義ですでに11月中に先行シングルとしてリリースされており、活動停止中だった『After 7』もこれを契機に本格的に活動再開となるのは間違いないでしょう。メルヴィンがしばらくグループを離れていた期間彼の息子のジェイソン(Jayson)がその穴を埋めていたとのことですが、おそらくこれを機に復帰するのでしょう。
また、盟友 Darryl Simmons(ダリル・シモンズ)と共作の同作品を、作曲者の Babyface 自身がリード・パートとコーラスに参加したヴァージョンが Babyface の新譜には収録されており、実の兄弟ゆえに声が似ている上にアレンジもほとんど変わらないのでよーく耳を凝らして聴かないとわからないかもしれませんが、どちらも素晴らしい出来となっていますね。ファンにとっては、これは必聴モノです。ぜひ聴き比べを。

 


Babyface / “I Want You” (feat. After 7)

 


After 7 / “I Want You”

 

そんなわけで、私的【Best Mellow Tunes 2015】は「Babyface」と「After 7」による『I Want You』ということになりました。
松尾氏も番組の中で触れていましたが、あと数年で60歳を迎えるベイビーフェイスですが、いつの時代も美しく分かり易くキャッチーな作品を生み出すことのできる、才能が一切枯渇することのない稀代のメロディメーカーとして称えられるべきでしょう。