Mellow Tunes ~ VOL.114 【Carla Bley】

3月に入ってから、日中は比較的温かい日が続くことが多くなってきました。
お休みの今日、ふらりと立ち寄った近隣の公園の梅が綺麗に咲き始めていました。花壇の植込みのパンジーたちも色鮮やかで、「ああもう春が来たんだなあ」と実感する今日この頃です。

 

 

 

こんな季節の変わり目に、この美しくピュアでとびきりメロウな作品で、聴けるピアノの音色に、身も心も癒されるようです。Carla Bley の1987年リリースの、実力派ミュージシャン6人編成による「六重奏」を意味するアルバム『Sextet』より、名曲『Lawns』をお聴きください。

 

 

 

珈琲、もう一杯いかがですか。

 

Carla Bley

 

【雑記】”All Things Must Pass” – 音楽産業の栄枯盛衰

やっぱり1970~80年代の音楽が、聴いてていちばん心地いいかもしれないなあ。
とにもかくにも「メロディ」が大切にされてた時代なんですよね、どのカテゴリーの音楽を聴いてもそんな印象があります。

 

「タワーレコード」の栄枯盛衰の歴史を綴ったドキュメンタリー映画

 

国内では90年代初頭にバブルが崩壊し、国際社会に目を向ければその後の「リーマン・ショック」や「テロ」などによって国際的な秩序の崩壊や経済的不況がはびこり、時代が混迷を極めたここ20年ほどで、趣味や娯楽である「音楽」の世界も良くも悪くも大きな変貌を遂げました。それは音楽を発信・供給をするサプライヤー側も、受容する側のリスナーを取り巻く「視聴する環境」の劇的な変化、つまりは「iPod」の登場による従来の「再生機器」とCDを主とする「メディア」の均衡の崩壊が始まり、音楽という産業全体の構造がすっかり変わってしまった「過渡期」が、特にこの10~15年くらいの間で発生していたんじゃないでしょうか。

これまで「現物」として存在していたソフトであるCDなりアナログ・レコードを「所有」することから、「Apple」「Spotify」に代表されるような、「配信」という姿カタチのないお化けのような「音楽ファイル」つまりは「データ」を個人で蓄積していくようになり、挙句の果てには「クラウド」という発想のシステムに変わりつつある状況が、もう僕らの身の回りに普通に存在しています。
このとてつもなく大きな変化を「進化」と捉えるべきなんでしょうが、ことハードの面では便利になったとはいえ、個人的にはあまり好ましい進化ではなかったかもしれません。発信されてくるソフトである音楽の「質=Quality」に関しては、録音やRe-Mixといった技術的側面から言えば当然向上してはいるものの、「楽曲」そのものがどこか画一化していて、従来からあったはずの美しい「メロディ」をどこかに忘れてきてしまったような、なんだか後ろ髪を引かれるような、そんな「物足りない感覚」がいつもずっと自分の中にくすぶっていたというのが、自分の本音と言えましょう。昨今の、80年代音楽のリバイバルと共にLP(アナログ盤)やカセット・テープなどが見直されてきているような事象も、そんな高度にデジタル化してしまった我々を取り巻く、なんだかゴツゴツした窮屈な環境に対するアンチテーゼなのかもしれません。結局は、音楽を聴くのは「生身の人間」であることは永遠に変わらない事実なのですから。

 

 

かつては、世界5大陸30カ国に200店舗を有する大手レコード店チェーンに肥大化したTOWER RECORDSも、時代の流れに翻弄され、現在では日本を除く世界中から実店舗が消滅してしまったのを、皆さんご存知でしょうか?「タワー・レコード」という巨大レコードショップの誕生から消滅までを描いた、名優「トム・ハンクス」の息子で自身もハリウッド俳優として活躍する「コリン・ハンクス」が監督を務めた映画「オール・シングス・マスト・パス」は、そんな激動の時代を描いたドキュメンタリーだそうです。近いうちに必ず観てみようと思っています。
“All Things Must Pass”    とは、すでに故人の George Harrison (ジョージ・ハリソン)が THE BEATLES の解散直後の1970年に発表したソロ・アルバム・タイトルで、時の移ろいと共に「すべては過去のものになっていく」といった意味で、いかにもタワーらしい潔いくらいのタイトル・ネーミングだなあと、なんだかすごく共鳴してしまいました。

過去に一度だけ、米国の旗艦店舗でタワーのシンボル扱いだった、ウェスト・ハリウッドのサンセット大通店をレンタカーを駆って訪れたことがありますが、当時は「マイケル・ジャクソン」の勢いがピークだった1980年代後半で、わくわくしながら店内に3-4時間位は滞在した記憶があります。もちろん、それ以外の全米主要都市の店舗にも、あちこちと足を運んだことがありました。日本国内でも同様でしたが、「どこかの街に着いたら、まずはタワーへ」といった感じの日々を、若い頃は過ごしたものでした。そういう意味では、今以上に世界中で「音楽」がそういう「熱」を持っていた、いい時代だったのかもしれません。

 

“All Things Must Pass: The Rise and Fall of Tower Records”
 

僕が経営していた実店舗の「Mellows」がなくなってからもこのサイト(ブログ)を続けてきたのも、そんな思いが強くて「いい時代にあった、いい音楽」を継承していくべきという視点から、こんなこと続けてる奴が世の中にいたっていいだろうという思いで、今日までマイ・ペースでやってきているのが実情なわけです。

ここのところよく文字にして表現してますが、若手の「ブルーノ・マーズ」の大活躍によって、よき時代の音楽のあるべき姿が戻ってきているような気がしてなりません。例えば彼の最新アルバム「24K MAGIC」を例に取ると、かつてのアナログ・レコードで考えたらベストな9曲程度の収録数とはいえど、POPSとして質の高い楽曲の数々は練りに練られたアレンジで構成され、素晴らしいプロデュースが成されているわけです。この「配信」がメインで「一曲ごと購入」の時代に、「アルバム」としての価値を再確認させるだけの内容の作品を世に出したことは、もう大変意義のあることですね。今は亡き「プリンス」が生前最後の昨年のグラミー授賞式のスピーチで、「みんなアルバムって覚えてるかい?」と観衆に問い掛けたのは、そんな事態を危惧したゆえの発言だったと思うんですよね。アーティストとしては、「アルバム」として聴いて欲しいわけですから。

音楽産業の構造は大きく変化してしまったけれど、人々が音楽が好きで、それらが自分の人生の傍らにいつもあって、尚且つ心の支えになっているという不変の事実は、たとえ時代が移ろっても変わらないはずだから。

 

 

AC Tunes ~ Vol.47 【Najee】

さて今回の「AC Tunes」では、デビュー時よりずっと聴き続けてきた米国のサックス・プレイヤーで、今やもうベテランの域に入ってしまった「Najee」の2ndアルバム「Day by Day (1988)」に収録されたヴォーカル入りのメロウな作品『So Hard to Let Go』をご紹介します。

 


Najee – “So Hard to Let Go”   (album: Day By Day – 1988)

 

フィーチャリングされた女性ヴォーカリストは Janice Dempsey (ジャニス・デンプシー)という、当時NYで勢いのあったHush Production系のアーティストで、Freddie Jackson や Lillo Thomas 等のバック・コーラスを勤めていた実力派のシンガーです。このリード・ヴォーカルを取った後、Hushの総帥ポール・ローレンスのプロデュースでアルバムも出してます。Hush 系のアーティストについては幾つか記事をUPしてますので、興味がある方はこちらへどうぞ。)

肝心の『Najee』の方はといえば、1986年以来約二年程度のインターバルで新作をコンスタントにリリースしていますね。デビュー当時はまだ「Smooth Jazz」なんてシャラくさい表現のカテゴリーが存在してなかった頃で、「アーバン・コンテンポラリー・ジャズ」などとジャンル分けされたりしていた記憶がありますが、キャリアとしてはもうかなり長く第一線で活躍している印象を受けます。ただ、僕自身はやはり初期の作品の方が好きですね。

実は当ブログにアクセスしてくださるプロのミュージシャンの方々、有難いことにほんとに沢山いらっしゃるんですが、なんだかサックス奏者しかも女性のミュージシャンの方が大変多くて、今後はサックス奏者の作品も色々取り上げていかないとなと思っています。個人的には、バリバリの「サンボーン世代」なので、やはりメロウで歌心のあるプレイヤーが好みです。

 

 

Mellow Tunes ~ Vol.113 【Roy Ayers】

Roy Ayers(ロイ・エアーズ)はアメリカのジャズ・ミュージシャン、ヴィブラフォン奏者。
自身のバンド、Ubiquity(ユビキティ)と共にジャズとファンクを融合させた音楽を生み出す。その独自性はアシッドジャズやレア・グルーヴ、ヒップホップに関わる人々に再評価されている。
(出典:Wikipedia)

 

 

以上が、ウィキペディアによるロイ・エアーズの簡潔な紹介文です。
太平洋戦争開戦直前の1940年生まれだから、今年で77歳を迎える、大変長いキャリアを持った大物 Jazz Men の一人と言えましょう。
最近よくこの人の古いアルバムを聴くことが多くて、そういえばこれまで一度しか彼の作品を紹介する記事(Mellow Tunes ~ Vol.25)をUPしてなかったので、これを機会にいくつかご紹介してみようと思います。

この人の作り出すサウンドは本当に色褪せることがなくて、どの時代に聴いてもいつも新鮮で、「古さを感じさせることのない」音作りには、本当に感心してしまう。

 

Roy Ayers / “Baby Set Me Free” (album: Naste – 1995)

 

 

Roy Ayers / “Mystery of love”
(album: VIRGIN UBIQUITY: UNRELEASED RECORDINGS -1976)

 

美しいヴィブラフォンの音色といい、色気と艶のあるヴォーカルも、そして変幻自在のアレンジと時代への対応力、どれをとっても素晴らしいとしか言いようのない、稀有なアーティスト。それがロイ・エアーズ。まだまだ時代を引っ張っていって欲しいものです。
 

 

Mellow Tunes ~ Vol.112 【Sottotono】

毎日少しずつに日中の時間が長くなり、『三寒四温』を繰り返し「春」を待つ季節となってきました。

前回の「Mellow Tunes」でイタリアで活躍中のシンガー・ソング・ライターの Al Castellana(アル・カステラーナ)の紹介をしましたが、その際ついでに「伊達男」が沢山いる ITALY では、どんなアーティストがいるのかちょっと興味があったので、YouTube 内をあちこち徘徊してみました。

洋の東西を問わず、やはり米国発のカルチャーの「音楽」や「映画」に至っては、世界中のあらゆる国々への影響が想像以上に大きくて、米国の「SHOW BIZ」の持つパワーを強く感じざるを得ません。

1980年代中期~90年代中頃までが最大のピークを迎えていたと記憶しているけど、米国発祥の「Hip-hop」「Rap Music」は、アジアの一部である日本はもちろん欧州でも若者の間では人気があり、多くのローカル・スターを輩出しているようです。
僕は以前から、「Black Music」全般に至って大好きではあるものの、どうしても「ヒップ・ホップ」と「ラップ」に関してはアレルギーが出てしまい、いまだになかなか受け付けないし、それほど自らすすんで聴きたいとも思わないのです。「真のR&Bフリーク」ではないと言われれば、なんともお答えのしようがないのですが、こればかりは好みというか体質的な問題なので、個人差があっても仕方がないのかなと思うところです。
例外として、ちゃんと「メロディ」があって「歌心のある」アーティストが、アルバムの中に収録した「ラップ」が部分的に導入されているようなものは、かえって新鮮さを感じたりするのですが、基本的にはあまり食指が動きません。

でもやっぱりあるんですよね、「メロディ」「グルーヴ」「コーラス」を持ち合わせたようなラップが。正直、これにはやられました。
『Sottotono』(ソットトーノ)は1994-2001年まで活動していた、イタリア国内で人気のあったヒップ・ホップ・ユニットで、今回取り上げる作品は同じイタリア国内で活躍する女性シンガーの「Jasmine」をフィーチャリングした、それはそれはとてもメロウなラップに仕上がっています。見た目はいかにもギャング・スター風の一見悪そうなアンちゃん二人組ですが、そのサウンドはといえば…

 

Sottotono – “Dimmi di sbagliato che c’è”
 

ここ数日間、この曲のグルーヴが頭から離れず、参りました。イタリア語はさっぱり分かりませんがラブ・ソングであることは間違いないのでしょう。それにしてもこれを「mellow」と呼ばずしてなんと呼びましょう。なんとメロディアスで美しいラップなんでしょう。こういうのは、大歓迎です。「目からウロコ」のイタリアン・ラップには驚きました。やっぱり世界は広いですね。

尚、この曲には、当ブログでも過去に取り上げたことのある Ray Parker Jr. & RAYDIO による “A Woman Needs Love”をサンプリングした、別のVer.も存在しており、そちらも人気があるようです。(視聴はこちらへ)

 

 

AC Tunes ~ Vol.46 【Al Castellana】

関東地方では先週「春一番」が吹き荒れ、二月とはいえ日中は気温の上がる日が増えてきました。いよいよ花粉とともに、春の到来の予感ですね。そろそろ皆さんの周辺でも始まる「出会いと別れ」の季節でもありますが、体調を崩しやすい時期でもありますので、皆様どうかご自愛ください。

さて今回の「AC Tunes」では、先日急逝した偉大なシンガー「アル・ジャロウ」とは別の「アル」さんで、イタリアで活躍中のシンガー・ソング・ライターの Al Castellana(アル・カステラーナ)の紹介をいたします。
 
今年で53歳になるアルさんは、自分とまさに同年代のアーティストだけに、これまで聴いてきた音楽が自身の作風に顕著に現れているような、そんな印象を受けるアーティストのひとりです。
前々回 Vol.44で紹介したドイツ人アーティストの Jeff Cascaro (ジェフ・カスカロ) もそうですが、米国発のSoul/R&b/Jazzなど黒人音楽をルーツとするいわゆる「Black Music」に多大な影響を受けて育った世代と言えるでしょう。

アル・カステラーナは、これまで当ブログでも何度かご紹介したことのある Mario Biondi(マリオ・ビオンディ)同様に、イタリア国内ではとても人気のあるいわゆる「Blue Eyed Soul」系のアーティストとして認知されています。アルより一回り若いマリオはもう少しJazz寄りで、世界中のメジャーなアーティストと精力的にコラボしたりしてますが、アルさんに至っては、どちらかというとイタリア国内またはEURO圏に存在する1970年-80年代のコアなソウル好きなオーディエンスに向けて、自身の音楽をマイ・ペースで発信しているような感じを受けますね。

なんの変哲もない低予算のありきたりなPVを見る限り、一見そこら辺にいるような、僕自身と同様の普通のおっさん風ではありますが、少しファルセット気味のジェントル・ヴォイスには、少々お疲れ気味の大人の皆さんへ、かなりの癒し効果が期待できますよ。
では、2013年リリースのアルバム「OUTSIDE MY WINDOW」より、『My Woman』をどうぞ。

 


Al Castellana / “My Woman” 
(album:  OUTSIDE MY WINDOW – 2013)