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Mellow Tunes ~ Vol.89【眠れぬ夜には Jimmy Scott でも】

まだまだ寒い日が続きますが、日中に車を運転しているとガラス越しの陽ざしが徐々に春の「それ」と感じられることが、なんだか多くなってきたような気がしています。街のあちこちでもパンジーやヴィオラの色鮮やかな鉢植えなどが、目に入る機会が増えてきたように思います。やはり春はそこまできているんですね。そういえば残念なことに、花粉の飛散も始まってしまいましたが‥

さて、最近よく車中や自宅でも聴いているのが Jimmy Scott(ジミー・スコット)なんですが、ブログ・リーダーの皆さんは彼のことご存知でしょうか?カフェ営業当時のご常連の写真家の先生などもよく聴いていると仰ってましたが、意外と「えっ、誰それ?」って方も多いのではないでしょうか。これまで取り上げる機会がなかったので、今回ちょっとご紹介させてください。

scott_jimmy昨年88歳で天に召されたJimmy Scott(ジミー・スコット)は、遺伝性のホルモン欠乏疾患による「変声期」を迎えないことから備わった中性的な『天使の歌声』で、世界を魅了した米国のジャズ・シンガーとして世界的にもその存在を知られています。ジミーは1950年代から“Little Jimmy Scott”としてすでにシンガーとして活動していたものの、所属レコード会社との契約上の問題等からショウ・ビズ界の表舞台に出てくる機会を徐々に失い、なんと30年~40年近い不遇の時代を過ごすこととなりました。唯一無二の優れたシンガーであるジミーをなんとか表舞台にカムバックさせようと陰で尽力してくれた作曲家の「Doc Pomus」が亡くなった際、ジミーが教会のパイプ・オルガンの伴奏による大切な故人に向けて捧げたガーシュイン兄弟の名曲『Someone To Watch Over Me』をその場で聴き感動した参列者たちの中に、後にジミーがアルバムをリリースすることになる Warner Brothers 傘下の Sire Record の社長であった Seymour Stein が偶然居合わせていたのでした。

 


Jimmy Scott / “Someone To Watch Over Me”
(album: All The Way – 1992)

 

そしてそのことが契機となり、ジミーは1992年に復活の狼煙を上げるべく、いまや伝説となったアルバム『All The Way』をリリースしました。
生前ずっと自ら「バラッド・シンガーと呼んでくれ」と言い続けていたというジミーが魂込めて発表したこのアルバムは世界中で大きな話題を呼び、当時すでに「67歳」となっていた彼の名が広く知れ渡るには多くの時間を必要としなかったのは言うまでもありません。本作中には僕も大好きな「ガーシュイン兄弟」の作品はじめ、それはまるで「宝石」のようなジャズ・スタンダードのバラッド作品がずらりと並んでいます。中でもガーシュイン兄弟の名曲『Embraceable You』は出色の出来と言えます。渾身の研ぎ澄まされたアルバム・プロデュース・ワークは、名匠トミー・リピューマ」(Tommy LiPuma) によるもの。悪いわけがありません。

 

 

そして更には、僕が “cafe Mellows” を立ち上げるきっかけとなった楽曲『My Foolish Heart』もクレジットされており、本当に ONE & ONLY なバラッド・シンガーとしか形容できないジミーの優しさと愛に満ち溢れた作品となっています。

なんだか神経が高ぶったりしてちょっと眠れぬ夜などには、ジミーのバラッドなどいかがですか。心がすーっと落ち着きを取り戻していくのを実感できるはず。ぜひとも YouTube などでもご視聴ください。
 


Jimmy Scott – The Documentary film “I Go Back Home”