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Mellow Tunes ~ Vol.153【Bruno Mars】

寒い日がこれだけ続く冬も珍しいというか、生まれて半世紀以上が経過しますが、正直なところあまり記憶がありません。もちろん南北に細長い日本列島ですから、寒冷地に居住する方々の生活と比較すれば、関東地方の冬は大したものではないのかもしれませんが。インフルエンザ等も猛威を振るっているようですので、皆様どうかご自愛ください。
先週降った雪も、あまり日当たりのよくない場所では、まだまだ存在感がありますね。

 

 
さて、先日の記事「AC Tunes Vol.63」Christopher Cross(クリストファー・クロス)の新譜をご紹介した際にも少し触れましたが、昨日(現地時間1/28)『第60回』と節目の年となる【グラミー賞授賞式】が、今回から会場をこれまでの西海岸のLAから、この時期は極寒の東海岸はNYの「マディソン・スクエア・ガーデン」に移し、予定通り開催され無事に式典を終えました。
今回のグラミーは、世界中で売れに売れたアルバム『24K Magic』を引っさげ、もはや主要部門含めなんと「7部門」(最優秀レコード賞/最優秀楽曲賞/最優秀アルバム賞/最優秀R&Bパフォーマンス賞/最優秀R&Bソング賞/最優秀R&Bアルバム賞/最優秀アルバム技術賞)にノミネートされている、『BRUNO MARS』(ブルーノ・マーズ)による受賞が、いったい何部門を制覇するかといったところに、否が応でもフォーカスが当てらていました。インターネットの普及により、リアル・タイムで「GRAMMY公式サイト」で受賞の状況を窺っていた音楽ファンも、当然ながら世界中に沢山いらしたことでしょう。

 

 

そして気になる結果ですが、ふたを開けてみれば「やはり」としか言葉が出てこないほどの、「ブルーノ」の文字通りの【独壇場】となりました。アーティストであるブルーノ本人が受賞したのが「6部門」、そしてエンジニア・技術者らに贈られる「Best Engineered Album, Non-Classical (最優秀アルバム技術賞)」も含め、計「7部門制覇」という偉業をやってのけました。予想はしていたものの、結果として、ノミネートされた全部門で受賞という快挙は、そうそう簡単にできることではありません。

プエルトリコ系の父とフィリピン系の母との間に生まれ、僅か6歳頃から故郷のハワイで観光客を相手に、大好きなアーティストのモノマネを中心にステージで数え切れない経験を積んできたことや、本格的な活動を視野にアメリカ本土に渡り、やがてあの名門レーヴェルの「MOTOWN」と契約に至るも、さっぱり売れずに契約解除となったなど、幾つかの苦い経験と過去があってこそのサクセス・ストーリー。そして、アルバム製作にも尽力してくれた彼にとっての「HERO」である「Babyface」はじめ、多大な影響を受けた「Jam & Louis」「Teddy Riley」ら偉大な先駆者たちの名前を挙げて、「そんな彼らに感謝したい」と「Best Album of The Year」の受賞スピーチを終えたブルーノの言葉を聞いて、彼やバンドの面々の現在の人気がどうこうというよりも、彼の持つ才能はもちろんであるけれども、「人間性」であるとか、ダンスを見れば一目瞭然「見えないところでの努力」だとか、そんな『苦労人の姿』も華やかさの陰に見え隠れしているような気がしてなりません。そして何より賞賛されるべきは、難解なことをリスナーやオーディエンスに投げかけることなく、「音楽」という日本語がそうであるように、「音」を「楽しむ」といった、ポピュラー・ミュージックにとってある意味「当たり前」で「普遍的」なことを、気心の知れたバンド・メンバー「The Hooligans」(ザ・フーリガンズ)たちとのオーディエンスをあっと言わせるダンス・パフォーマンスをはじめ、パワフルで圧倒的なステージ・アクトを実現できたことに他ならないと思います。ライブのチケットが入手できないのも、よく理解できますね。

時折ブルーノのことを揶揄したりする人たちも散見されますが、1980-90年代に流行したサウンドを意図的に再現した音作りだって、その時代のファッション等のカルチャーを復活させたのだって、「偽者」や「偽物」だったら僕らの世代も含め、世界中がここまでは支持しません。そこには彼なりの高度で独自の「咀嚼」と緻密な「計算」が存在し、それらの音楽たちは感覚的かつロジカルに組み立てられ、世に送り出された「産物」と言えるのではないでしょうか。
かつて来日した際のTV番組内のインタビューの中で、日本が誇る偉大な音楽家「山下達郎」氏の国宝級のアカペラ3部作である『On The Street Corner 1-3』をインタビュアー役の女子アナからプレゼントされ、1・2作目は持ってるけど、3作目が手に入らず探していたんだと、すごく喜んでいたのを見た際、このフレキシブルな感性とあらゆる音楽への愛情や敬意を持つ姿勢が、ブルーノをここまで押し上げてきたんだなと、妙に納得してしまったことがありました。

 

 

なによりとにかく、『24K Magic』「最優秀アルバム賞」を受賞したことは、この音楽配信が中心の時代に、とてつもなく大きな『楔』を打ち込んだといっても過言ではないでしょう。過去記事で何度も取り上げたけれど、故人となった「PRINCE」が、2015年グラミーの「Album of The Year」のプレゼンターで壇上に立った際に、「みんなアルバムって覚えてるかい?アルバムってまだまだ大事なんだよ。」と、居合わせた観衆やTVカメラの向こう側の世界中のリスナーに語りかけたことで、大変話題になりました。(詳しくこちらへ) なので、今回のブルーノの本作品の受賞については、音楽家や関係者たちがずっと危惧していたことへの、音楽界とリスナーからの一つの回答だと、僕個人としては信じたいなって思います。もしも彼の永年のアイドル的存在だった「マイケル」「プリンス」が存命であったなら、それはきっと最大級の賛辞を惜しまなかったことでしょう。

昨今国内のSONYでもアナログ盤のプレスとリリースが再開されたように、本来は収録曲数に限界のあるアナログ盤の「アルバム」には、せいぜい8~9曲で収録時間45分程の限られたスペースに、アーティストそれぞれの想いやストーリーがきゅっと凝縮されているもの。収録作品に対して厳選に厳選を重ね完成した『24K Magic』も、そのセオリーを踏襲し「アルバム」の価値を極限にまで高めてくれたブルーノの本作品の「Album of The Year」受賞は、当然の結果にきまってる。と思われた方、ぜったいに大勢いらっしゃるはずですよね。

『24K Magic』Bruno Marsもまだよく知らないという方のために、Playlist をUPしました。良質なものに「遅すぎる」ということはありません。ぜひともご覧ください。

 


“Bruno Mars” Speech at The 60th Grammy Awards
& some PV

 

Bruno Mars に関する過去記事は、こちらへどうぞ。

また、今年も現地に行かれていらっしゃる音楽プロデューサーの「松尾潔」さんから、きっと来週または再来週の自身のFMラジオ番組内で、詳しいお話を聞くことができるのではと、楽しみに期待しております。

 

Mellow Tunes ~ Vol.111 【Bruno Mars】

グラミー賞を過去7度も獲得し、文字通り Jazz Vocalist の伝説となった、アル・ジャロウ(Al Jarreau)の訃報が伝えられる中、現地時間2/12に執り行われた2017第59回グラミー賞授賞式は、英国人アーティストの「Adele(アデル)」が主要部門を総なめするといった結果で、音楽の夢の祭典は幕を閉じた。

 

毎年気にしているわけではないけれど、トランプ氏が大統領になって最初のグラミー賞授賞式ということもあって、自分も含め世界中から大きな注目を集めていたのは間違いない事実であろう。多くの参加・受賞アーティストからも「人種」「国籍」にまつわる「偏見や差別」を否定する類のメッセージが、これほど目立ったグラミーも珍しかったのではないだろうか。
結果として多くの部門でのグラミーを受賞した「白人」アーティストである「アデル」から、さながら一騎打ちの様相を呈していた「黒人」アーティストである「ビヨンセ」への感動的なメッセージが発せられたのも、今の国際社会で問題視されている合衆国大統領へのシニカルなメッセージと捉えられなくもない。少し前に行われたスーパーボウルのハーフ・タイム・ショーで、大観衆に同様のメッセージを送った「レディ・ガガ」のパーフォーマンスも、大々的に世界に向けて発信されていたのも記憶に新しい。

 

今回取り上げる『Bruno Mars』は、世界的規模で大変なセンセーションと売上等あらゆる記録を更新中の New Album 『24K Magic』が、アルバムの発売時期が2017年度のグラミーのノミネートから外れていて来年2018年度の審査対象となることから、今回は客演といったかたちで、授賞式を大いに盛り上げたようだ。

もうすでにYouTubeなど多くの動画サイトにUPされているように、昨年亡くなったPrince(プリンス)を追悼するトリビュート・コーナーで、映画「PURPLE RAIN」でもお馴染みのかつてのプリンスの盟友「Morris Day(モリス・デイ)」率いる「The Time」と競演を果たした。紫のスーツと映画の中で使用された白いエレキ・ギターを携え、名曲「Let’s Go Crazy」をプリンスと縁の深いミュージシャンたちと演奏する様は、まさに現代を代表するスターそのものだった。圧巻のラストのギターソロもそうだが、幼い頃からマイケル・ジャクソンプリンスがアイドルだった現在31歳となったブルーノは、故プリンス同様に歌だけでなく、ドラム等多くの楽器もすごいレヴェルで演奏してしまう。もっとも一番飛び抜けているのは、復活させた1980-90年代のサウンドとその圧倒的なダンス・パフォーマンスに他ならない。

ブルーノのおかげで、『メロディ』『グルーヴ』が大事にされていた時代の音楽が、現代に戻ってきたのは間違いのない事実であって、あの『New Edition』の復活等、80年-90年代に活躍した世代のアーティストが世界的にも見直されてきているムードが充満しているように感じるのは、かつての全盛時を知る者なら誰も否定しないであろう。ブルーノによるこの功績は、本当に大きい。ある意味ノーベル賞モノといってもいいくらいだ。Babyface がソング・ライティングとプロデュースに協力した「To Good To Say GoodBye」など、メロディやコーラスを大切にした作品にはとても好感が持てるし、ブルーノのように影響力を持ったアーティストが、こういった傾向を前面に押し出していくことは、大変有意義なチャレンジであり、個人的にもこのサイトを利用して全面的に応援したい。

 

Bruno Mars : To Good To Say GoodBye [24K MAGIC]

 

 

Bruno Mars – 24K Magic [American Music Awards Performance]

 

 
プエルトリコ人の父とフィリピン人の母親の間に生まれ、マイケルやプリンスに憧れてハワイで育ったブルーノの存在を見ても、「米国」という国の持つその多様性がこれだけのアーティストを育んだ、ひとつの答えではないだろうか。「移民」がとか「人種」がとか、自分の国の歴史を否定しかねないことになりやしませんか。どこかの国の首脳と、のんきにゴルフなんかやってる場合じゃないだろうに。

 

 

Masterの今これが聴きたい ~ Vol.20【Bruno Mars】

3月に入ってからの不安定な気候と猛威を振るう憎き「花粉」などのせいで、しばらく記事をUpする気にもなれずにいたら、あっという間にお彼岸の時期がやってきてしまいました。これはいけないと思いつつ、さっそく最近よく聴いているアーティストの作品を続けてご紹介しようかと思います。

 

Bruno-Mars3

 

プエルトリコ人の父とフィリピン人の母の間に生まれ、今年で30歳となる Bruno Mars(ブルーノ・マーズ – 本名: Peter Gene Hernandez)は米国ハワイの出身で、2010年にアルバム『Doo-Wops & Hooligans』でのデビュー以来破竹の快進撃を続けている、非常に稀な才能に恵まれたシンガーでありソング・ライターであり、そしてプロデューサーでもありミュージシャンでもあります。
幼い頃から多大な影響を受けたという故人のマイケル・ジャクソンのまるで再来と表現されることも多いブルーノですが、彼の作り出す音楽は1970~80年代の古きよき時代のFUNK/SOUL/DISCO 等の名残りを彷彿させるサウンドが最大の特徴であり魅力となっています。

ブルーノの現在最大のヒットとなっているだろうと疑う余地のない、世界中で大変な話題となった2013年リリースの2作目のアルバム『Unorthodox Jukebox』に収録された『Treasure』は、彼のバンドメンバーとの圧巻のステージ・パフォーマンスが有名で、その場に居合わせたオーディエンスはもう興奮のるつぼと化しています。2013年に行われた Billboard Music Awards 2013 での「Jackson 5」を意識したパーフォーマンスは、もうすでに伝説となってしまったかのようです。170cmに満たないブルーノがどう見てもいちばん目立つことからも、ダンサーとしても超一流のブルーノに驚きを隠せないことでしょう。

 


Treasure – Bruno Mars Billboard Music Awards 2013

 

2014年の「SUPER BOWL」のハーフタイム・ショーで見せつけた圧倒的なパフォーマンスも、えらいことになっていますね。こちらでは、ブルーノがマイケル・ジャクソンの「Beat It」に影響を受けて生まれた楽曲『Locked Out Of Heaven』をオープニングで演じています。そして『Treasure』へとなだれ込む様は、もうすでに稀代のエンターテイナーと呼んで差し支えない水準に達していますね。歌い踊る彼の姿に、マイケルやプリンスそしてジェイムズ・ブラウンが見えてきやしませんか。これを「カッコイイ」と言わずしてなんと表現すべきでしょうか。いやぁ、ブルーノ恐るべし。

 


“Super Bowl 48” – Bruno Mars-Full Performance Halftime Show

 

マイケル亡き後の「Super Star」がなかなか出現してこなかった米国はもちろん世界の SHOW BIZ 界にとって、大変なタレントを持った「救世主」がようやく現れたような印象を受けるのはきっと僕だけではないでしょう。これからますます目が離せないアーティストの一人です。
 

 

Mellow Tunes ~ Vol.187【Daryl Hall】

いつもご訪問ありがとうございます。
なかなか南方の海域の海水温が下がらず、台風ばかりの秋への入り口ですが、皆様無事にお過ごしでしょうか。とはいえ、夏の名残りと秋の落葉がせめぎ合いながらも、やはり季節は着実に秋~冬に向けて進んでいるようです。

 

 

 

9月に入った頃から、かなりの頻度で世界中から、このアーティストの名前での検索から、当サイトへの訪問が一気に増えてきました。過去の苦い経験から、いつものことながらそういった現象が起きると、まずろくなことがないので、急いで米国のメディア等をチェックしましたが、不安なニュース等がなくホッとしたところです。

洗練された美しいソウル・ミュージック「フィリー・ソウル」の故郷でもある米国・フィラデルフィア出身の、白人でありながらも「熱きソウル」を持ち合わせたアーティストと言えば、知らぬ者はいない真のR&B/Soul シンガー・ソング・ライター、それが「Daryl Hall」(ダリル・ホール)というものです。

過去記事でも書いたことがありますが、黒人音楽のカテゴリーである「R&B/Soul」に多大な影響を受けた「白人」アーティストたちは、かつて「Blue-Eyed Soul」(ブルー・アイド・ソウル)などと、白人層からも黒人層からも皮肉を込めて、カテゴライズされた時代が長く続きました。「もし黒人シンガーがオペラを歌ったら、『ブラウン・アイド・オペラ』っていうのかい?僕らは『ソウル・シンガー』なんだ」と、「ダリル」もデュオの相方の「ジョン・オーツ」も、こう皮肉たっぷりにインタビュアーにやり返していたのも、よく聞くエピソードの一つでした。
彼らが1981年にリリースした大ヒットアルバム『Private Eyes』からのシングル・カット、『I Can’t Go For That (No Can Do)』に至っては、時の全米チャートはもちろんのこと、なんとブラック・ミュージックの聖域でもある「R&B/Soul」チャートでも首位を獲得し、人種を超えて自らの主張と評価を決定的で確実なものにしてから、早いものでもう35年以上が経過します。なんだか感慨深いものがありますね。現代の「Bruno Mars」(ブルーノ・マーズ)の活躍ぶりや、出自が「African American」ではないアーティストが創り出すそれらの音楽を、「R&B」として躊躇なく受け入れるリスナーの意識の変化の土台は、「Hall & Oates」 (ホール&オーツ)や故人となったGeorge Michael」(ジョージ・マイケル)らの活躍と努力によってもたらされたものであることは、間違いないと思います。

秋が深まるにつれ、この人のソウルフルな声は、僕らの世代の郷愁を呼び起こすに違いありません。
新譜が待たれるところですねぇ。

 

 

Soul Classics of Daryl Hall
Track-01: I’m In a Philly Mood (Album: Soul Alone – 1993)
Track-02: Help Me Find A Way To Your Heart (Album: Soul Alone – 1993)
Track-03: What’s in Your World (Album: Can’t Stop Dreaming -1996)

 

※ダリル・ホール関連記事についてはこちらへどうぞ。

 

 

Mellow Tunes ~ Vol.168【Daniel Caesar】

いつもご訪問ありがとうございます。
事故以来、ちょっと仕事以外でキー・ボードを叩くのがシンドイ時があって、なかなか更新できずにすみません。
まもなく新緑の5月も終わろうとしていますが、例年よりも早い春の到来からすべてが前倒しで、個人的には心底嫌いな暑い季節が、ちらちらとすぐ目の前に見え隠れしているような、ここ最近の関東地方の気候です。暑い季節には、正直なところ「Mellow」な音楽は不向きであり、やはり肌寒い秋から冬にかけてが「旬」であり「Best Season」であることは間違いありません。「早く秋が来ないか」と、もうそんなことを考えている不届き者です。
日中はもう夏のようですが、夜明け前などは気温もぐっと下がって、朝焼けなどが美しい時期でもありますね。

 

 

さて久しぶりに更新する今回の「Mellow Tunes」ですが、昨年あたりから北米のみならず世界中から大変な注目を集めている、カナダはトロント出身のR&B界期待の New Star「Daniel Caesar」(ダニエル・シーザー)のご紹介です。ジャマイカ出身のゴスペル・シンガーを父親に持ち、幼少の頃からクワイア(聖歌隊)で鍛えられたダニエル・シーザーの音楽的なバック・グラウンドは、特にスロウ・ジャムにおいて顕著となり、極上のファルセットを伴ったその卓越したヴォーカル・スキルは、他を圧倒するほどのものがあります。昨年(2017年)、満を持してリリースされたスタジオ録音アルバムとしてのデビュー・アルバム『Freudian』は、音楽全般とりわけ「Black Music」に大変造詣が深くまたアーティストらへのリスペクトも決して忘れることのない、偉大な「Barack Obama」(バラク・オバマ)前大統領の「Favorite Song List 2017」に、作品がリストされていたことは、今でも語り草になっているくらい。オバマ前大統領は、二年前にも「プリンス」逝去にあたり、公式に出した追悼コメントに、世界中の音楽愛好家たちがその慈愛に満ちた言葉に感銘を受けたものでした。

勢いに乗ったダニエルのアルバム『Freudian』は、記憶に新しい今年1月末に行われた「第60回グラミー賞」において、最優秀 R&B アルバム賞へ、そして世界を驚愕させたシングル作品『Get You』最優秀 R&B パフォーマンス賞へと、堂々2部門においてグラミー賞にノミネートされました。
結果はといえば、過去記事で特集したように、まさに時代の寵児となった「Bruno Mars」(ブルーノ・マーズ)による6(7)部門制覇となったことは、皆さんの記憶にも新しいことでしょう。ブルーノの独壇場の舞台裏では、こんな作品もひっそりとノミネートされていたわけです。

「次世代R&B」を体現するアーティストの一人として注目を集める、まだ若干25歳のダニエルが、アルバムのリリース以前に先行して放った出世作『Get You』は、世界を震撼させるだけの楽曲であり、Lyricの内容はR&Bですから当然の如く「sensual(センシュアル)」(官能的)ものとなっておりますが、PVで堪能できるように、それはそれはアンビエントな世界を繰り広げています。かつての80-90年代でいうところの、まだまだ現役の偉大なアーティスト『SADE』で代表されるようなカテゴリー「Quiet Storm」の再来とも言えるのかなと、そんな印象が強く残りました。
とにかくこのグラミーにノミネートされた楽曲の特筆すべき点は、なんと言っても「音数」の少なさではないでしょうか。リズム隊の「ベース」「ドラムス」そして控えめな「ギター」によって構成され、あらゆる無駄な音を削ぎ落としたシンプルなサウンドに、あまりに美しいファルセットのヴォーカルが絡みつくように、静かに静かに独特のグルーヴがうねり続ける、そんな出色の出来の作品となっています。一見すると、ジャマイカの血の影響か、レゲエでも歌い出しそうなルックスですが、アルバムを通しで聴くと、この相当な実力に裏づけされたヴォーカル・スタイルそしてテクニックに、もう何十年も「Black Music」を聴き続けてきた僕も圧倒されっ放しでした。

 


01. Daniel Caesar – “Get You” ft. Kali Uchis [Official Video]
02. Daniel Caesar & H.E.R. – “Best Part”
(Both Songs from the album: Freudian – 2017)

 

今年3月に初来日予定だったダニエルの公演は、残念なことに中止となってしまったようですが、この人の今後の活動に注目したいところです。

以前からずっと申し上げているように、当ブログは最新の作品を中心に且つタイムリーに紹介するサイトではありません。たとえ「古い作品」であれ「すごく古い作品」であっても、僕自身が「これは素晴らしい」と感じたものを、その時点でご紹介していくというスタンスに、これまでもこれからも一切変わりはありません。音楽との付き合い方って、流行だけを追うよりも、そんなのんびりとした付き合い方の方が、絶対楽しいってものです。
人生を変えてしまうほどに、自分にとって大切な音楽に出逢うのに、「早い」も「遅い」もないのです。

 

Mellow Tunes ~ Vol.166【Diana Ross / Julio Iglesias】

いつもご訪問ありがとうございます。
先般の事故で、永年僕の足となって支えてくれた愛車を失い、だいぶ落ち込んでおりましたが、ようやく気持ちの整理もついたところで、「Mellow Tunes」も再開です。

それにしても、あっという間に季節が春から初夏へ移行中といった印象が強いのは気のせいでしょうか。それはそうとして、「菜の花」の黄色も、森や林の木々たちの新緑も日に日に緑の濃さを増してきています。数日前に隣町の床屋さんに散髪に向う途中、前を通りかかった森林公園内の緑の濃さに吸い込まれるように、樹木などが発散する化学物質「フィトンチッド」(phytoncide)を浴びてまいりました。ちょっと痛んだ心身には、ちょうどよい治癒効果があったような気がしています。これは有難い。

 

 

 

 

当サイトにもう一つシリーズを追加しようかどうかと以前から悩んでいるのが、いわゆる「Duet」もののご紹介なんですね。「Mellow Duet Tunes」なんてのも悪くないかも、とずっと考えていました。
以前に音楽プロデューサーでありR&Bミュージックの権威でもある「松尾潔」さんもラジオ番組で仰ってましたが、「Duet」とりわけ男女による「Duet」作品というのは、Black Music (黒人音楽)と総称される音楽の中でも「R&B/Soul」のカテゴリーにおいて、現在も過去もその作品数の存在が突出しており顕著であることは、皆さんよくご存知の事実です。メッセージ色の強いジャンルの例えば「Rock」などでは、あまり見かけることがないように、そもそも「R&B/Soul」という音楽は、男女の恋愛模様であったり「sensual(センシュアル)」(官能的)な内容を表現したカテゴリーと言い切ってしまってもよい、そんな立ち位置にいる存在なわけです。「好きだ、嫌いよ」なんて非常にシンプルな内容のリリックは、母国語が英語ではない世界中のリスナーにとっても、いつの時代も分かり易く訴えることが可能で、故に古の時代から「男女Duet」による「名曲」と後に呼ばれるスロウ・バラッドを中心とした「LOVE SONG」の数々が沢山生まれ、時代が変わっても多くのカヴァー作品が後を絶たないのは、そういった「ジャンル」というか「カテゴリー」に起因していることに他なりません。
先般来日して日本中を熱狂させた『Bruno Mars』もそうですが、聴衆に訴えるものが決して難解でなく「分かり易い」というのが、R&Bも含めたPOPミュージックの本来あるべき姿なのだと、改めて気付かせてくれるよい見本なのではないでしょうか。

 

いつものように前置きが長くなりましたが、今回ご紹介したい男女によるDuet作品はこちら、Diana Ross(ダイアナ・ロス) / Julio Iglesias(フリオ・イグレシアス) の大御所二人による、1984年にリリースされた、それはそれはスケールの壮大な「Love Ballad」であり「愛の賛歌」と、当時絶賛された作品『All of You』です。古くからの音楽ファンの方であればお分かりのように、ダイアナ・ロスは言ってみれば「米国の”美空ひばり”」であり、フリオ・イグレシアスはスペイン人ですがスペイン語圏諸国を中心に、“史上最も多くのレコードを売ったアーティスト”の称号を持ち、女性ファンを熱狂させ“世界の恋人”と呼ばれるほどの人気アーティストであることは、周知の事実です。

米国人プロデューサーの「Richard Perry」の下、作詞は「Cynthia Weil」作曲は「Julio Iglesias (本人)と Tony Renis」により製作された本作品は、まずは先行して1984年8月にリリースされたフリオの「英語」によるアルバム『1100 Bel Air Place』の1stトラックとして収録されました。1ヶ月遅れでリリースされたダイアナのアルバム『Swept Away』にも当然本作品は収録され、「ダイアナのアルバムに、何故フリオが?」と、接点が見あたらないそんな二大アーティストの共演に、世界中が驚かされましたが、作品がシングル・カットされた数ヵ月後の12月には、もう世界中がこのベタベタな「愛の賛歌」に魅了され、作品は空前の大ヒットとなりました。
今になって振り返れば、当時スペイン本国やメキシコ等々スペイン語圏では圧倒的な人気を誇るフリオの、本格的な米国での成功を狙ったマーケティングやプロモーションであったのは明らかで、英語詞による作品群も、少々人気に翳りの見えてきたダイアナとのコラボレーションも、お互いにとって成功した事例となりました。

かくいう自分も、当時大学3年だったと記憶してますが、当時通い詰めていた渋谷の奥の方の宇田川町にあった「TOWER RECORDS」の旧店舗で、この曲を店内で初めて耳にしたときの衝撃は今でもはっきりと覚えています。世界中のマダムたちが、「フリオさま~」と追い回している理由がよく理解できました。ラテン女性たちが好むルックスはもちろん、とにかくあのビブラートの利いた「震える声」が、容赦なく耳と脳を刺激するのには自ら驚きました。ダイアナはもう説明不要の安定感と、Marvin Gaye(マーヴィン・ゲイ)とのDuetで、Soul Classics の金字塔である『You are Everything』以来の素晴らしいDuetと言っても過言ではない程の、圧倒的な存在感を見せつけ、まさに女王の貫禄でした。

 

Diana Ross & Julio Iglesias – “All Of You”

 

僕と同年代かそれ以上の洋楽好きの方々であれば、このPVは記憶にあるかもしれませんが、現在共に74歳となるお二人が「34年前」のちょうど「40歳」の時にリリースされた作品だけに、当時のPV(MV)によくありがちな、キャストが突然踊り出すようなミュージカル仕立ての演出による映像作品は、他のアーティストのPVでもとても多かったような印象が強いですね。

古きよき時代を回顧するような映像ですが、フリオのアルバムのタイトルが『1100 Bel Air Place』だけに、ビバリー・ヒルズ、ホルムビー・ヒルズ、ベル・エア、3つ合わせて「プラチナ・トライアングル」といわれるLAの高級住宅街の中でも、群を抜く超セレヴしか居住することを許されない「Bel Air」地区での、毎日パーティーばかりしているようなリッチな人々のライフ・スタイルを意図した演出だったわけですね。過去若い頃にこのエリアにクルマで行ったことがありましたが、「HONDA 」のコンパクトカーでノロノロ運転していた僕の後ろには、米国映画の中でよく見かけるLAPD(ロス市警)のパトカーが、しばらく追走してきたのは言うまでもありません。

 

 

AC Tunes ~ Vol.64【Stone Foundation + Paul Weller】

いつもご訪問ありがとうございます。
お隣の韓国で開催中の冬季オリンピックもピークを過ぎ、2月も残すところあと一週間ほどとなりました。寒い日がまだまだ続くとはいうものの、自然界は徐々に春を受け容れる準備に取り掛かっているような印象を受けます。

 

 

「Adult Contemporary」な作品を紹介するシリーズの「AC Tunes」ですが、今回は英国・ウォリックシャー州を拠点とする8人編成の Soul/Jazz/Funk バンド『Stone Foundation』のご紹介。
バンドのリーダーでVocal/Guitar担当の Neil Lee Jones(ニール・ジョーンズ)を中心に2010年に結成された『Stone Foundation』は、翌年にアルバム・デビュー。アグレッシブなライヴ活動で人気と評価を徐々に高め、また米人気ドラマにも楽曲が使用されるなど、英国内外からも注目を浴びることに。2015年には初来日し、「フジロック」にも出演するなど、その実力と評価は折り紙つき。

 

 

そして2017年に入って間もなく、3作目となるアルバム『Street Rituals(ストリート・リチュアルズ)』をリリースしました。本作品へは、「The Jam」「The Style Council」の創始者でありUK音楽界では文字通りレジェンドとして国内外各方面から賞賛とリスペクトを集める、『Paul Weller(ポール・ウェラー)』が全面的なプロデュースの上Vocalとして3曲への参加を筆頭に、名門ソウル・レーベルSTAX の伝説的シンガー、William Bell (ウィリアム・ベル)、そして更に女性ベテランR&Bシンガーの Bettye LaVette (ベティ・ラヴェット)など、これまたレジェンド級のアーティストが参加した豪華なアルバムとなっています。

 

Stone Foundation – “Back In The Game” & “Your Balloon is Rising”
ft. Paul Weller + The Style Council – “You’re The Best Thing”
album: Street Rituals – 2017 / Café Bleu – 1984
 

僕自身も含め、現在50-60代の方々であれば、「The Style Council」に多大な影響を受けた世代であるのは言うまでもありません。才能の塊である Paul Weller(ポール・ウェラー)が、音楽の垣根を軽々と飛び越えて、どんなカテゴリーの音楽でもあっという間に自分のものにしてしまう程に、非常に多彩な彼自身の音楽的ルーツの一つでもある、R&B/Soul/Jazz/Funk へ立ち戻り、現代で活躍する『Stone Foundation』のようなアーティストへ、自らラヴ・コールしこの企画が世に出たという事実が、とても画期的であり嬉しく思いました。
そして久々に見るPVでの「ポール」の歌う姿は、かつて1980年代に世界を席巻した当時のまるで「ギリシャ彫刻」のようなルックスから、髪は白く薄くなりましたが刻まれた顔中の皺の数々といい、相当にカッコイイ歳の取り方をしていることが窺えるほどの、相変わらずのダンディさですよ。そして年輪と説得力を増したヴォーカルに、懐かしさと同時に新鮮さを憶えるくらいです。「いぶし銀」のようなという例えがよく言われますが、まさにそんな印象ですね。ポール自身の今後の音楽活動への影響も、少なからず出てくると想像できる、そんな貴重なコラボレーションでした。

今回の米国での「グラミー」のノミネート作品の多くが、 BLACK MUSIC(黒人音楽)の現代のカタチとなって久しい(もはや主流と言うべきか)「HIP-HOP」系のアーティストや彼らの作品群が、その多く占めたことは記憶に新しい事実です。かつての、米国から発信され世界中で一世を風靡した「R&B/Soul/Jazz/Funk」に確認できた、メロディックで叙情的でもある典型的なその「サウンド」は、例えば「UK SOUL」というカテゴリーの表現が存在するように、欧州の一地域である英国をはじめ、黒人音楽に寛容な北欧やオランダ・ドイツ・イタリア辺りでその遺伝子が少しずつ変化しながらも、確実に伝承されていっているような、そんな印象を受ける機会が増えてきました。そう、かつて「JAZZ」というカテゴリーが辿った道を、歩いているような気がしてなりません。『Stone Foundation』は特にそうですが、PVや画像をご覧の通り、ほとんどのメンバーの年齢が40-50代といったところからも分かるように、もちろん黒人音楽に限らずとも「良さを理解できる人たちが、再生を試みる」といった現象は、世界各地で人知れず起きているのではないでしょうか。

米国に出自を持ち、「アフロ・アメリカン」により産み出されたカテゴリーの「黒人音楽」が、世界各地に伝播され継承されていくという現象自体は、歓迎されるべきことであり諸手を挙げて大賛成です。
但しその反面、米国の「移民制度」に否定的な態度をあからさまに取る自国家のリーダーの方針に対する否定的な社会背景が影響していることで、RAP Music をはじめ体制や政治を批判するだけのメッセージ色の強い「Hip-Hop」な音楽だけが蔓延し、美しい響きで満たされたメロウな音楽たちが駆逐されていってしまうのには、ものすごく寂しい気がしてなりません。現大統領が就任後の1年間で、三度に渡る「銃乱射事件」が発生している米国内の悲しい現実なども、音楽界を取り巻くそういった社会情勢が、更に混沌とした状況を加速させていくような、そんな嫌な予感がしてなりません。
先日の「グラミー」を席巻した「Bruno Mars (ブルーノ・マーズ)」の大車輪ぶりも例外ではなく、今この現代において、かつての古き良き時代の「R&B/Soul」を再生させているアーティストは、いわゆる「アフリカ系アメリカ人」ではない人種に属する人たちが多いという現実が、それを如実に物語っています。とはいえ、一番重要なのはそういった現象が、ようやく「米国内」から発生してきているという事実です。僕自身としては、そんなムーブメントがここ日本も含め、世界の各地から勃発することを、大いに期待したところです。

 

 

AC Tunes ~ Vol.63【Christopher Cross】

寒さのピークに伴い、毎年日本経済が停滞する時期の「2月」が、もう目の前まで迫ってきました。空気も澄み切って、空の美しさだけは格別な季節です。

 

 

そんな寒い季節の海の向こうでの恒例行事といえば、【グラミー賞授賞式】と、音楽好きの間では割とHOTな話題で盛り上がる時期でもあります。今回から開催地をこれまでの西海岸のLAから、この時期は極寒の東海岸はNYの「マディソン・スクエア・ガーデン」に移し、現地時間1/28に開催されるとのこと。今回のグラミーは『第60回』と節目の年となるそうで、世界中で売れに売れたアルバム『24K Magic』を引っさげ、もはや主要部門含めなんと「7部門」(最優秀レコード賞/最優秀楽曲賞/最優秀アルバム賞/最優秀R&Bパフォーマンス賞/最優秀R&Bソング賞/最優秀R&Bアルバム賞/最優秀アルバム技術賞)にノミネートされている、『BRUNO MARS』(ブルーノ・マーズ)による受賞が、いったい何部門を制覇するかが気にになるところではありますが、結果を楽しみに待ちたいと思います。
※[1/28-29の現地速報によれば、ノミネートされた全部門で受賞とのこと。”Best Engineered Album, Non-Classical”(最優秀アルバム技術賞)も含めて計7部門制覇はなんという快挙!]

 

 

そんな話題に事欠かない「グラミー」ですが、今から「37年」も前の「1981年」開催のグラミー賞で、デビュー・アルバム『Christopher Cross』(邦題: 「南から来た男」1979年発売)で、グラミー史上初の「主要4部門を含む5部門」を制覇したのが、時の新人アーティスト、Mr.フラミンゴこと『Christopher Cross』(クリストファー・クロス)でした。
僕らのような50代から上の世代の洋楽好きの方々であれば、誰でも一度は耳にしたであろう、あの「爽やかクリスタル・ヴォイス」で世界中のAOR (Adult Oriented Rock)ファンを虜にしたクリストファーが、昨年12月に3年振りに出したニュー・アルバム『Take Me As I Am』がかなりの話題となっているらしい。

僕の場合、R&B/SOUL/JAZZを初め『BLACK MUSIC』(黒人音楽)はもちろんのこと、学生時代にはこよなく愛聴していた、日本国内では『AOR』(Adult Oriented Rock)と呼ばれ認知されている、『Adult Contemporary』なカテゴリーの音楽も大好物でして、当サイトに於いて『AC Tunes』シリーズを設けているのも、そんな理由からです。
現在日本国内におけるこの分野の権威的な存在であり、音楽ライターであり各種プロデュース業も精力的にこなす『金澤寿和』さん主催のLight Mellow on the Webは、僕も度々訪れる内外でも有名なサイト(ブログ)で、「Adult Contemporary」なカテゴリーにおける、良質な音楽の情報を絶えず提供してくださっている、とても価値のあるサイトです。(金澤さん、当サイトへのご訪問いつもありがとうございます。)今回は金澤氏のサイトで、「クリストファー・クロス」の新譜の内容をしっかりと解説していただいたおかげで、大変興味深く新譜を聴くことができました。

金澤氏のレビューにもありましたが、新譜『Take Me As I Am』はシンガー・ソングライターの作品というよりは、ある意味とても「FUSION」的なアプローチを狙った、クリストファーのこだわりのギター・サウンドにフォーカスを当てた、実に聴き心地の良い、後味のよいアルバムにまとまっているような印象を受けました。少ない「Lyric」と印象的な「フレーズ」を繰り返すことと、ギター・ソロのパートをこれでもかと注入した結果生まれ出た作風が、なんだかこの現代において、強烈な新鮮さを感じました。

 


Christopher Cross – New Album “Take Me As I Am” (2017)
1. “Down to the Wire”
2. “Baby It’s All You”

 

前述のグラミー5部門制覇のデビュー・アルバム『Christopher Cross』(邦題: 南から来た男)のリリース時は、彼のヴィジュアルがレコードの売上げに影響を及ぼす可能性があるとのレコード会社によるマーケティング面での戦略から、しばらくの期間一切メディアに登場しなかったのは、もはや伝説となっています。事実、1983年の初来日時、日本武道館でのコンサートに僕自身も足を運びましたが、当時世界中を席巻していた米国西海岸出身の「West Coast Rock」系アーティストたちとはまったくイメージがかけ離れており、とにかくセンター・マイクの前でまったくアクションを取ることもなく、ただひたすらに歌うこととギターの演奏に集中していたそのステージ・アクトに、ある意味驚きを隠せなかったのを、もう35年が経過した今でも鮮明に思い出すことが出来ます。とにかく、ギターの演奏へのこだわりが凄いというのは、感じましたね。
新作で聴ける彼のギター・ソロからは、20代の半ばで初めて渡米した際、LAはじめ西海岸の高速道路、通称「Pacific Coast Highway」(California State Route 1)をドライヴした際の、生涯見たことのないような「青すぎる雲ひとつない空」や「美しく入り組んだ海岸線」の光景を呼び起こすような、そんな乾いた、そしてレイド・バックした『音』が聴こえてきて、すごく懐かしい気分になりました。青春時代を彼のサウンドで過ごした方も、そうでない若い世代の方も、ぜひ聴いてみて欲しいアルバムです。現在66歳となったクリストファーの、まさに『Timeless』なヴォーカルに、ただひたすらに「感謝」の思いが募ります。

 

[Remarks]
日本国内ではまだ新譜発売の準備ができてないようです。
こちらの「Official」へどうぞ。

 

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