「優しい音色」シリーズも、過去に大変お世話になった方にご不幸があった直後から一度も更新ができずにいましたが、季節も移ろい少し気持ちに整理がつきましたので再開します。
“The Melody At Night, With You”
先日、おひとりでよくお店にいらっしゃる写真家の先生と、Keith Jarrett(キース・ジャレット)と Bill Evans(ビル・エヴァンス)のことですこし話をしました。先生もご自身のブログで時折触れていらっしゃいますが、その際話題となった沢山発表されているキースのアルバムのなかでも、シンプルでいてナチュラルなピアノソロ作品『The Melody At Night, With You』から、多くのアーティストが取り上げてきたスタンダード・ナンバーで『I Loves you Pogy』を紹介したいと思います。
参考までに、なぜ「Love」ではなく「Loves」と「s」が付くのかには諸説あるようで、ひとつにはこの曲が書かれたジョージ・ガーシュイン作の『ポーギーとベス』(Porgy and Bess)のキャスト全員が黒人によるフォーク・オペラであり、1920年代初頭の米国において好景気に沸く生活とは無縁の南部の黒人居住区に住む貧しいアフリカ系アメリカ人の生活を描いた作品であったため、教育の機会を与えられなかった黒人たちの日常会話をリアルに再現するための表現方法だったとの説があるようです。
まあそんなことよりも、この楽曲もそうですがジョージ・ガーシュイン作曲の作品にしばしば見ることができるあまりに lyrical(叙情的)な響きと美しさは、ピアノ・ソロで最大の魅力を発揮することを、キース・ジャレットの演奏を通して再認識することができます。
『The Melody At Night, With You』は、 キースが慢性疲労症候群という病気でしばらく活動を休止してからの1998年にリリースされた復活作であり、看病にあたった最愛の妻へ向けた、自宅で録音した珠玉のバラッド集として有名です。ぜひアルバムを通して聴いていただきたい作品です。
Keith Jarrett / I loves you, Porgy (album: The Melody At Night, With You – 1998)
そして、僕の大好きな Bill Evans がトリオで演奏している作品も素晴らしいので、二人のピアニストの表現の違いなどを聴き比べてみるのもいいかもしれません。
Complete Village Vanguard Recordings 1961
Bill Evans Trio / Porgy (I Loves You, Porgy)
(album: Complete Village Vanguard Recordings 1961)
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