あっという間の11月。今年ももう残すところ、あと二ヶ月。なんと時の経つのが早いことか。
こんな幻想的な夕暮れ時の空が見られるのも、そう長くはないかもしれない。
今日11月1日は、もし実店舗の『Mellows』が営業を続けていたならば、8回目の Birthday に当たる日。閉店後は毎年、この日が近づいて来ると、心にさざ波が立ち始め、かなり気持ちが沈みこんでしまう。最愛の店を CLOSE してから、自分にはどんな進捗があったのかどうなのかを、嫌でも自問自答する機会が訪れる。正直なところ、何もない、というのがいまの自分の心境だ。
とはいえ、お店を愛してくださったお客さんたちとの、「このサイトだけはCLOSEしないで欲しい」との約束だけは、なんとか守っていられることだけが唯一の救いであり、また自分自身にとっても「心の拠り所」となっているのは間違いない。
秋も深くなるにつれ、いろんな物思いに耽りがちとなるものだ。
実店舗「Mellows」の開業への大きなモチベーションとなった、敬愛する Jazz ピアニストの『Bill Evans』の遺した多数のアルバムの中でも、名作の誉れ高いアルバム『Portrait in Jazz』に収録された『Blue in Green』は、死して尚も Jazz 界の帝王として君臨する『Miles Davis』の作品としても、当然ながら今でも広く認知されている。エヴァンスのアルバムより8ヶ月ほど前にリリースされた、モダン・ジャズの金字塔であり「Jazz 音楽史上最高傑作」として21世紀に入っても尚セールスが落ちることのない、マイルスの代表作『Kind of Blue』にも、『Blue in Green』はもちろん収録されている。
リリース当初はマイルス本人の作曲となっていたが、エヴァンスが自身のアルバムに収録した際に二人の共作 (Miles Davis, Bill Evans) と表記したことから、その後は長く共作とされていた。しかしながら、近年公開されたエヴァンスの自伝映画の中で、レコーディングに関わった多くの周辺ミュージシャンや関係者の証言から、エヴァンスの作曲した作品であることが、二人が他界した後に判明している。
Miles Davis – “Blue in Green”
(album: Kind of Blue – 1959)
エヴァンスの1958年リリースのアルバム『Everybody Digs Bill Evans』に収録された、1940年代に「Leonard Bernstein」によって書かれた『Some Other Time』にインスパイアされ、生み出されたエヴァンスのオリジナル『Peace Piece』も、マイルスのアルバム『Kind of Blue』に収録された『Blue in Green』『Flamenco Sketches』も、当時の音楽ビジネス界の大人の複雑な事情はさておき、レコーディングから「60年」という途方もない時間が経過した現代においても、そのあまりに普遍的で美しいバラッドの完成度の高さに圧倒されてしまう。まさにエヴァンスがレコーディング・メンバーにいなかったら、あの完璧なカタチで『Kind of Blue』が世に出ることはなかったであろう。それを見越して、一度はマイルスの下を離れたエヴァンスを、レコーディングに再び呼び戻したマイルスの目利きぶりには、今更ながら驚かされてしまう。
Bill Evans – “Blue in Green”
(album: Portrait in Jazz – 1960)
『Blue in Green』は、そんな Jazz の世界ならではのエピソードなどはともかく、深まる秋の音楽鑑賞のプレイ・リストに、ぜひ加えていただきたい素晴らしい作品であることは言うまでもない。