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Masterの今これが聴きたい ~ Vol.16【赤い目のクラウン】

夕方から夜間にやってくる一雨ごとに、ジワジワと季節が秋にシフトしていくのを肌で感じる今日この頃です。昨年同様に記録的な暑さと少ない雨の8月も、いよいよ来週でおしまい。珈琲もいちばん美味しく感じられる季節、待望の「秋」の到来です。とはいえ、まだまだしばらく9月に入っても残暑は続くのがお約束。ならば、もう少し涼しげな「音」が欲しいところです。

めったに邦楽は紹介しないのですが、日本のアーティストでいちばん「ゾクッ」とくるほどの声色(こわいろ)を持つ人といえば、この人は絶対はずせません。そうです、大御所の井上陽水の登場です。僕個人としては、それほどの陽水マニアではありませんが、心に感動を呼び起す印象的な楽曲を数多く提供し続けている、超ベテランのシンガー・ソング・ライターの一人です。

今度は愛妻家

写真家を演じる「トヨエツ」とその妻役の「薬師丸ひろ子」主演の、2010年公開の映画『今度は愛妻家』の主題歌でありながらもCDの発売がなく、後に発表される陽水本人のアルバム『魔力』にようやっと収録された『赤い目のクラウン』ですが、それはそれはあまりに美しく儚い世界を描いた作品ですね。シルクやベルベットのようにスムーズでクールないつも通りの彼の声ですが、どこかほんのりと温かい、なぜだかそんな印象を聴くたびに受けます。まあ、それにしてもこれほどまでに艶のある声の持ち主は、唯一無二の存在といえるでしょう。

映画自体も、トヨエツ演じる亭主役を通して「男ってなんでこう身近な存在の相手に感謝の気持ちを素直に表現できない生き物なんだろうか」って、既に映画をご覧になってそんな風に思われた諸兄も、きっと多いはず。陽水が歌うように、後で悔やんでばかりいる目を赤く腫らした「クラウン(道化師)」とは鋭い表現であり、主題歌と映画がきちんとリンクした、観た後で「じわじわっ」と感動が畳み掛けて襲ってくるような、そんな心温まる作品でした。

 

魔力

井上陽水 / “赤い目のクラウン”
映画『今度は愛妻家』主題歌 (album: 魔力 – 2010)