前回の「Masterの今これが聴きたい~Vol.20」で紹介した Bruno Mars もそうですが、これまで敢えて取り上げてこなかったようなアーティストや作品をチョイスしているのがこのシリーズの特徴といえば特徴です。以前記事にも書きましたが、店舗営業当時の店内でプレイする音楽はお店の名にちなんだあくまでMellowでありSlowな感じの作品を中心に選んでいましたので、正直それなりに気を遣ったものでした。一方このコーナーでは「時代」や「流行」そして「カテゴリー」にとらわれることなく、ただシンプルに自分自身が「今これが聴きたい!」と感じたアーティストや作品を思い切って取り上げることができるのがミソなんです。まあそんなことはどうでもいいですね。
さて今回取り上げる Daft Punk(ダフト・パンク)は、フランスはパリ出身のハウス/フィルターハウス/エレクトロ・デュオ)で、トーマ・バンガルテル(Thomas Bangalter – 1975年生まれ)とギ=マニュエル・ド・オメン=クリスト(Guy-Manuel de Homem-Christo – 1974年生まれ)の2人によるユニットです。(詳細はWikipediaをどうぞ)
ライブやPVで見られる金属マスクを被った、1999年9月9日のコンピューターの爆発事故によって「アンドロイド(ロボット)」になってしまったという彼らのエレクトロ・ポップは世界的な大流行を見せ、2013年リリースの4thアルバム『Random Access Memories』で翌年2014年のグラミー賞でノミネートされた5部門すべてを制覇するといった快挙を成し遂げたのは、世界中で大きな話題となりました。
そんなテクノロジーに極端に傾倒していた「アンドロイド」である彼らが、敢えて生の楽器の音と腕利きミュージシャンに拘ってコラボレートしたのが『Random Access Memories』でした。中でもゲストミュージシャンとして招かれた、1970~80年代のDISCO/FUNK Music のファーストクラスのバンドであった “Chic(シック)”のリーダーでギタリストとしても超一流の Nile Rodgers(ナイル・ロジャース)の起用は大当たりとなり、結果物凄い相乗効果を生み出すことに成功しました。後にグラミーの最優秀ポップ デュオ/グループ(Best Pop Duo/Group Performance)を獲得することになった、ヴォーカルに売れっ子 Pharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)をフィーチャした『Get Lucky』は売れに売れ、その授賞式でのパフォーマンスにスティーヴィー・ワンダーが参加した様子は広く世界に配信されました。会場に居合わせたポール・マッカートニーはじめ多くの著名なミュージシャンが楽しそうに口ずさんで踊る姿が見られることからも、彼らの感性が世代を超越して受け入れられたことを証明しています。
世界の大都市におけるクラブ・シーンで流行しているダンス/ハウスも含めた現代的な Euro Beat/Pop のような「 テクノ系」のサウンドが個人的にはすこぶる苦手なのですが、このアルバムでは最新のコンピュータ・テクノロジーと職人(スタジオ・ミュージシャン)たちの技術が素晴らしい状態で共存しているように感じられ、ぜひ聴いたことのない方々にも一度 YouTube 等で視聴してみて欲しいと思います。
さてご紹介の楽曲はというと、DJやプロデューサー業を本業にしている米国人の Todd Edwards(トッド・エドワーズ)をなんとヴォーカリストとして起用してしまった『Fragments of Time』。1970~80年代の西海岸で流行ったサウンドの記憶を呼び覚ますような軽快な響きで、印象的なギタープレイは前出のナイル・ロジャースではなく「Paul Jackson Jr.(ポール・ジャクソン Jr.)」によるものです。これからの季節にぴったりの作品じゃないでしょうか。
Daft Punk / “Fragments of Time (feat Todd Edwards)”
(album: Random Access Memories – 2013)
またこの作品を制作した際のことを、ヴォーカル兼プロデュースで参加したトッド・エドワーズが語っているエピソードが印象的でした。興味のある方はどうぞ。