【雑記】Coffee Break ~ Vol.6「冬に咲く花」

やっぱり今年は暖冬なのだろうか。とはいえ、早朝の特に日の出前などには気温が0℃前後に下がることもあるので、なんだかんだ言っても冬らしい季節の真っ只中というべきなのだろう。

 

 

今朝の朝刊の「天声人語」を読んで、今は無き実店舗「Mellows」の開業当時のことをふと思い出した。
かつて、朝日新聞社の世界中に点在する海外支局長を歴任されたというヴェテラン記者の方が、東日本大震災直後に独立・開業したばかりの僕のことに興味を持たれて、取材に来られたことがあった。その時にはすでに一旦定年退職され、再雇用による地方支局所属の一記者として地元の話題などを自分の足で取材し、地方版紙面に掲載するコラムを担当されていた。取材当日、カウンター越しに珈琲を味わっていただきながら、結構な時間のインタビューを受けた。生い立ちから取材されたことには、正直驚いたものだった。その際、記者の方から、一つだけお願いをされた。「今のブログのスタイルを続けてほしい」と。
訊けば、取材を申し込まれるずっと以前から、数か月に渡る開店準備の期間中も、僕の「奮闘記」を読んでくださっていたという。流行りの「SNS」 のようなコミュニケーションよりも、あなたには今のスタイルが合ってるし、訪問者もそれを期待しているはずだからと。
「『天声人語』を小さい頃から読んでくださっているそうですね。それがよく感じられますよ。」と、リップサービスだとは分かっていても、その一言がすごく嬉しかった。その時に伺ったお話では、なんでも「天声人語」の担当者は不定期に代替わりはするものの、2007年頃からはそれまで「論説委員」一人だけで担当していた体制が、原則二人体制に変わり、交代でコラムを受け持つとのこと。朝日新聞社に記者として入社したからには、ほとんどの記者や編集者にとって、まさしくそこは出世などとは一切無関係の「憧れのポジション」だということだった。身近な先輩や後輩がその貴重なポストに抜擢される度に、臍を噛む記者・編集者が大半で、その方も退社までには一度は担当してみたいと切望されていたそうだが、念願叶わずだったとのこと。実力だけではなく、むしろ「運」やタイミングが重要なんだと仰っていたのが、とても印章深かった。

もう三十年以上も前に他界した父から口癖のように、「天声人語だけは読んでおけ」と言われ、いつの間にかそれが自分の「心の拠り所」となって、早いものでもう半世紀が経とうとしている。この話、天国の親父にしてあげたら、「だから言ったじゃないか」って、満面の笑みで反応してくれたと思う。親父の命日にあたり、そんなことを思った令和二年の年明け。

 

「天声人語」1/16/2020

 

 

Whitney Houston – “Exhale (Shoop Shoop)”
(album: Waiting To Exhale [Original Soundtrack Album] 1995)