通勤時、時間に余裕があるときにほんの少しの時間だけどたまに立ち寄る、お気に入りの森がある。真夏の今でも、その森の入り口に車を停めて窓を開けると、幾分涼しい風が車内に吹き込んでくる。
大きな雑木にたかったままの、セミの羽化後の抜け殻を偶然に見つけた。
地中から這い出て、天敵を避けるためずいぶん高いところまで登ってきたみたいだ。
学者によれば実際にはもう少し長いそうだけど、「セミの寿命は一週間」と子どもの頃からずっと聞いてきた。種類によっては10年近い歳月を地中で過ごし、やっとの思いで成虫になって、わずか7日間の命を昼夜を問わず必死に力強く鳴き続け、そして命尽き果てる。それも、その他の生き物にもよくあるように、鳴くのはオスだけらしい。
抜け殻を見て、「こいつ今頃どうしてるんだろう」と、つい心配になり、なんだか妙に切なくて、眉間の辺りがちょっと熱くなった気がした。「歳をとったのかな」って、思わず独り言を呟いてしまう。
いつの時代も男ってやつは、夢を追いかけて必死になって…
『My Foolish Heart』 そんな馬鹿げたことを思う夏の一日。
愛する Bill Evans (ビル・エヴァンス)の奏でるリリカルな演奏が最高だと思うけど、夏らしくラテン・フレイバーで満たされた力強い『My Foolish Heart』も、悪くないんだなぁ。
Chucho Valdes / “My Foolish Heart”
(album: Solo Piano – 1993)
アフロ・キューバン・ジャズの創始者、Chucho Valdes(チューチョ・ヴァルデス)の演奏に、ウルッとくるなぁ。