仕事で忙しかったお盆休みもようやく終わり、心身ともに疲弊しきった状態で帰宅したところ、危篤状態が続いていると数日前からネット上のニュースを通して伝え聞いていた、「Aretha Franklin」(アレサ・フランクリン)が亡くなったとの訃報が、米国デトロイトより世界中に発信されていた。長きに渡り「Queen of Soul」の称号を欲しいままにしていたアレサだけれども、享年76歳、長く膵臓癌で闘病中だったらしい。悲しい知らせは、疲れた身体に追い討ちをかけるようだ。
そして、また一つの時代に幕が下りてしまった。
これだけ偉大なアーティストであったにも拘らず、当ブログではこれまで取り上げたことがなかった。彼女のバックグラウンドであるゴスペル寄りであったり聴衆を圧倒する程迫力満点のFunkness溢れる作品群を思うと、「Mellow Tune」と捉えることのできる作品は、そう多くはないのかもしれない。とはいえ、そういった自分で決めた基準からまだまだ取り上げていない偉大なアーティストが多すぎるじゃないかと、自分自身にダメ出しをせざるを得ない。
でも遅すぎるということはないはずだから、僕の敬愛する「Babyface」がアレサの復活を手助けした作品で、彼女がアリスタ・レコード所属時代の1994年にリリースされ、全米R&Bチャートで5位となったスロウ・ミディアムなバラッド、『Willing To Forgive』を取り上げておこうと思う。
Aretha Franklin – “Willing To Forgive”
(album: Respect – The Very Best Of Aretha Franklin)
そしてもう一つ、米国の音楽史上感動的なステージとして、永く人々の目に耳に刻み込まれたであろうと信じて止まない、アレサの熱唱を取り上げぬわけにはいかない。1967年にアトランティックよりリリースされた彼女の代表作である「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」(ナチュラル・ウーマン)は、既知の通り、やはり米国を代表する女性シンガー・ソングライターの草分け的な存在でもある「Carole King」(キャロル・キング)夫妻による作品だ。
毎年優れた芸術家に贈られる「ケネディ・センター名誉賞」の、2015年の受賞祝賀公演で、受賞者の一人であった「キャロル・キング」へのサプライズ・ゲストとしてステージに登場した「アレサ」のピアノでの弾き語りから始まった「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」は、圧巻のパフォーマンスとなったのは、比較的記憶に新しい出来事だ。キャロルの感激の表情はもとより、「この人は心底音楽を愛している」と僕自身もずっとリスペクトしている、授賞式に招かれていた「バラク・オバマ元アメリカ合衆国大統領」が、人目も憚らず頬を伝う涙を拭う姿に、「アレサ・フランクリン」という一人の女性ソウル・シンガーの偉大さが、端的に象徴されているのではないだろうか。
Aretha Franklin – (You Make Me Feel Like) A Natural Woman
(Kennedy Center Honors 2015)
R.I.P. Aretha…
Rest In Peace [安らかに眠れ]