Mellow Tunes ~ Vol.157【Leon Ware】

北陸地方や北日本に長く停滞した寒気団もようやく緩み、ここ関東地方では今日に限ってですが、さながら3月中旬並みの最高気温まで上昇しました。明日からはまた真冬へ逆戻りということですが、そんなことを例年のように繰り返しながら、やっと春がやってくるんですね。

 

 

さて今回の「Mellow Tunes」ですが、ちょうど一年前の2月23日に世界中のR&B/SOULファンからたいへん惜しまれながらも、77歳でこの世を去った、「Leon Ware」(リオン・ウェア)を取り上げようと思います。
Marvin Gaye(マーヴィン・ゲイ)に提供したSoul Classicの名曲『I Want You (1976)』をはじめ、それはもう数え切れないほどの「Mellow Tunes」を生み続け、メロウでロマンティックでそして官能的な楽曲で世界中のリスナーを虜にしてきた「リオン」ですが、当然ながら活動期間が長きに渡る為、ただでも長いのが、長すぎる記事とならぬよう、掻い摘んでご紹介をいたします。

1972年に自身の名を冠した1st.Album「Leon Ware」を United Artists Records から既にリリースしていたリオンは、彼のソング・ライティングの才能があの大御所Quincy Jonesの目に留まり、クインシーのアルバム「Body Heat (1974)」に、自身が書いた『If I Ever Lose This Heaven』がアルバムのラストに収録されるという、大変名誉な出来事がありました。しかも、この楽曲を一緒に歌ったのは、まだブレイク前夜であったミニー・リパートンでありアル・ジャロウでした。「リオン・ウェア」「ミニー・リパートン」「アル・ジャロウ」のトリオによるコラボなんて、三者がすべて「Big Name」となった現代では考えられない出来事であり、曲が書かれた1973年の時点で、彼らの才能を当時既に見極めていた御大「クインシー」の「凄み」とは、もう末恐ろしいというしかありません。
R&B/SOULを語る際、後に「レジェンド」と呼ばれるこの方々は絶対に欠かすことのできない三人ですが、当サイトのご訪問者の皆さんであればよくご存知の通り、残念なことに「ミニー」は1979年に31歳で夭逝、そして「アル・ジャロウ」は昨年2017年の「グラミー」開催中に訃報が伝えられました。そして彼のトリビュート記事を当ブログでUPして間もなく、2月に入り前立腺癌の治療中だった「リオン・ウェア」までが、帰らぬ人となってしまいました。思い起こせば、もうそれは「悲しみの連鎖」という以外ありませんでした。
そんな歴史も踏まえ、今では故人となってしまった三人が、まさに「ブレイク前夜」ともいえる時代のレコーディングで一同に会した、歴史的な作品『If I Ever Lose This Heaven』からお聴きください。

 


“If I Ever Lose This Heaven” – QUINCY JONES
ft. Minnie Riperton, Leon Ware & Al Jerrau
(album: Body Heat – 1974)

 

クインシーに大抜擢された「リオン」のソング・ライティングの才能は目覚しい勢いで開花し、遂には当時のR&Bの「アイコン」であった大物「Marvin Gaye」(マーヴィン・ゲイ)の目に留まり、後に名作の呼び声高いマーヴィンのアルバム『I Want You』で、決定的となりました。元々は「リオン」が「ダイアナ・ロス」の弟の「Arthur “T-Boy” Ross」と共作し、リオン自身の作品として世に出す予定だった『I Want You』を、どうしても自分が歌いたいと主張する大物スターのマーヴィンに譲渡することと引換えに、リオン自身の2作目のオリジナル・アルバム『Musical Massage』のリリース権を「MOTOWN」より得たというのが、マーヴィンの名作『I Want You』誕生に関するエピソードとして、その後によく語られています。
それでは「リオン」によるメロウ・サウンド全開ともいえる『I Want You』をどうぞ。

 


Marvin Gaye – “I Want You”
(album: I Want You – 1976)

 

マーヴィンに泣く泣く譲渡したリオンの作品『I Want You』によって、リオンはいよいよ2作目のオリジナル・アルバム「Musical Massage (1976- Motown)」をリリースするものの、残念なことに大きなヒットとはならず、レーヴェルをその都度替えてリリースしたその後のアルバム「Inside Is Love (1979 – Fabulos)」「Rockin’ You Eternally (1981 – Elektra)」も、一定の評価を得るものの、クインシーやマーヴィンの作品としての価値とは、違う評価が与えられていたのかもしれません。一方日本国内や欧州では、再び「リオン」自身の名前を冠した「エレクトラ」レーヴェルから改めてリリースした、『Leon Ware (1982 – elektra)』から、当時のA.O.Rの流行に伴った「Adult Contemporary Music」の需要がピークを迎えていた背景もあり、リオンのメロウでロマンティックで洗練されたサウンドは、当時の世相にマッチして、熱狂的なコアなファンを世界中に増殖させるに至りました。
彼の名刺代わり的な作品として伝わる『Slippin’ away』は、そんな当時を代表するような音楽の一つとして受け容れられていたように思います。日本国内での『メロウ大王』という呼称も、彼の為に付けられたものでした。

 


Leon Ware – “Slippin’ away”
(album: Leon Ware – 1982)

 

その後は時代と共に、自らのアルバムを数年おきにリリースしながら、また同時にマイ・ペースで多くのアーティストへの楽曲の提供やプロデュース業に、軸足を移していったような印象がありますね。

あくまで「メロディ重視」の僕は、正直苦手なので聴く機会はあまり多くありませんが、現代のHIP-HOP分野のアーティストからのリスペクトは大変なもので、多くのアーティストにサンプリングされる機会も多いようです。
そして、昔から音楽カテゴリーとしての「JAZZ」もJAZZのミュージシャン・アーティストの多くが、欧州では本場米国以上に大変リスペクトされるように、「リオン」もその例外ではないようです。
2008年「オランダ」で人気のある SOUL BAND「Liquid Spirits」が「リオン」を招聘してリリースした『Melodies Ft. Leon Ware』という作品は、もはや「メロウネスの極致」としか例えようのない楽曲として、世にリリースされました。

 


Liquid Spirits – Melodies Ft. Leon Ware (2008)

 

また、晩年になり、かつて「Mellow Tunes ~ Vol.37」でも一度取り上げましたが、イタリアを代表するJAZZ/SOULシンガーとして君臨する「Mario Biondi」(マリオ・ビオンディ)との、大人の男二人によるDUETは、もう鳥肌モノのコラボレーションとなっています。このアルバムのプロデュースを買って出たのは、英国ジャズ・ファンクの大御所ユニットであるINCOGNITOのリーダーでもあるジャン・ポール・“ブルーイ”・モーニックで、ブルーイの「リオン」に対するリスペクトは相当なものであることが窺えます。

 


Mario Biondi (feat. Leon Ware) – “Catch the Sunshine”
(album: SUN – 2012)

 

 

 

まだまだ沢山あるのですが、一度では無理なので、今回はこの辺りで終わります。
Leon Ware(リオン・ウェア)という「メロウなレジェンド」と出逢えたことを、本当にありがたく思います。

また、この記事中に登場した三人の「R&B/SOUL/JAZZ」を語る上でのレジェンドである、Al Jarreau (アル・ジャロウ)、Minnie Riperton (ミニー・リパートン)、Leon Ware (リオン・ウェア) の、ご冥福をあらためてお祈りいたします。

R.I.P.
Rest In Peace [安らかに眠れ]