Mellow Tunes ~ Vol.243【Daisuke Kawaguchi】

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クリスマスのイルミネーションなどを車窓から見かけるにつけ、季節が足早に冬の「Holiday Season」に向かって一気に進んでいくのを感じる、いつもの12月の入り口。それでもなお、やはり極端に人工的なものよりも、僕にとっては自然現象のナチュラルな美しさの方が、むしろ魅力的に感じてしまう。たぶん、いつもどこか「Mellow」な音を求めているのも、きっと根っこは同じことなのかもしれません。

 

 

さて、先日参加させていただいた『松尾潔のメロウな夜間授業~R&Bの愉しみ~』の会場で、松尾さんが「ケミ御三家」(豊島吉宏氏・和田昌哉氏・川口大輔氏)と呼ぶ「チーム・CHEMISTRY」の屋台骨を支える、和田さんと川口さんと幸運にも少しお話をする機会がありました。「和田」さんに関しては、ちょうどよいタイミングでご自身の新曲のリリースがありましたので、先に記事にさせていただきました。
そして今回の「Mellow Tunes ~ Vol.243」でご紹介させていただく『川口大輔』さんは、シンガー・ソングライター/作曲家/作詞家/編曲家/キーボーディスト/音楽プロデューサーと、マルチな才能を持ちあわせた、和田さん同様に稀有なアーティストです。また、初期の「松尾潔」氏プロデュース作品群より、まさに右腕となってずっと支えて続けている存在であることは、前出の「和田昌哉」さんと同様の存在ですね。
2002年の日韓共催FIFAワールド・カップの公式ソングとして川口さんが作曲を手掛けた『Let’s Get Together Now』は、韓国で公式に放送された初めての日本語詞の歌としても歴史的な首位を獲得し、当時大きな話題となったことを記憶されている方も多いのでは。

とにかく多くの著名なアーティストの作品の作曲/編曲そしてプロデュースを数多くこなしていらっしゃる川口さんの作品の中でも、僕がいちばん好きなのは、どうしても「スロウ・ミディアム」「メロウ」な作風の楽曲に集中してしまいます。なぜなら川口さんが創り出す、ことバラッド作品群におけるメロディ・ラインやコーラスが美しい楽曲が少なくなく、そんな作品たちを聴くたびに、現代における稀有な作曲家のお一人だと認識を新たにすることが度々あります。

 


DOUBLE -「ストレンジャー」
(album: Ballad Collection Mellow – 2010)

当サイトでもずっとサポートさせていただいている、今年で「Season 10」 を迎えた大人のためのラジオ・ミュージック・プログラム『松尾潔のメロウな夜』の中でも、過去にリクエストして、松尾さんに番組のオープニングで取り上げていただいたこともある『DOUBLE』『ストレンジャー』が、僕自身にとっては、数ある「松尾潔」氏プロデュース作品群の中で、(甲乙つけがたいですが)、最も愛する作品であることは、この作品のリリース以来変ずっと変わらない事実です。終わりかけの恋愛の情景をしっとりと描写する作詞は、もちろん「松尾潔」氏、そして作曲/編曲は「川口大輔」氏なのは、言うまでもありません。本作品において溢れ出るような「メロウネス」は、フィリー・ソウル界の大御所である「トム・ベル」や「ギャンブル&ハフ」あたりが制作にあたったのではと思えるほどの、ソフィスティケイテッドな流麗さを纏って、そっと佇んでいるような印象の作品です。
もともとはボサノヴァやサルサなどのバンドでのピアニストの経験であるとか、川口氏自身のルーツとなっているというラテンやブラジリアン・ミュージックの要素は、おそらくR&B/Soulに深淵な理解のある松尾氏との出逢いによって、CHEMISTRY ならぬ「化学反応」が生じたのではないかと、そんな印象を受けています。

さて、そんな川口氏の最近のお仕事の中でも特筆すべきは、なんといっても16年ぶりの松尾氏プロデュースの「CHEMISTRY」のニューアルバムに収録された『Heaven Only Knows』『数えきれない夜をくぐって』の作曲/編曲に尽きるのではないでしょうか。特に後者の『数えきれない夜をくぐって』という作品は、アルバムに収録する最後の一曲となったそうで、オーセンティックなソウル・マナーで満たされた本当に美しい Ballad / Slow Jam の仕上がりで、松尾氏が形容したように「ロバータ・フラック」が歌っても何の違和感さえないほどに磨き上げられた楽曲と言えるのではないでしょうか。もちろんケミの二人の歌ヂカラが更にそれを増幅しているわけですが。

 

CHEMISTRY 『Heaven Only Knows』-Music Video

 

 

そして、当サイトでも何度か取り上げている「土岐麻子」さんの多くのアルバムにも、川口さんの作曲・プロデュースの作品が多く収録されていますが、僕が中でもいちばん好きなのは、なんといってもスロウ・ミディアムのこの作品。うーん、やっぱり素晴らしい。


『僕は愛を語れない』
土岐麻子
 

それにしても、初対面の自分にきちんとした大人のマナーで対応してくださった「川口さん」「和田さん」お二人の素晴らしい人間性もそうですが、「松尾さん」は本当に素晴らしいブレインを抱えていらしゃると感じました。再始動後の「CHEMISTRY」への評価も含め、いいモノを創り出すには「やはり人あってこそ」と痛感した、今日この頃です。

 

 

 

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