Kashif (カシーフ)が亡くなってしまった。
グレン・フライ、モーリス・ホワイト、プリンス、ビリー・ポール、トゥーツ・シールマンス、ロッド・テンパートンと、2016年に入ってからというものの、続発する愛するアーティストの「またの訃報」に、大いに心が乱れ、ざわついて仕方がない。
前回、10月に入ってすぐに他界された「ロッド・テンパートン」(Rod Temperton)の訃報記事をUPしたときと同じで、9月下旬頃に“KASHIF” “カシーフ” “HUSH Production” などのワードで Google 等のサーチ・エンジンによる検索結果により、世界中から当ブログへと辿り着いた読者の方が多かったようで、「80年代が今また見直されていることによるものだろうか?」と、「ロッド・テンパートン」の時のアクセスとは比較にならなかったので、大して気にも留めていなかった。
数日前になって、「カシーフが9/26にLAの自宅で死去しているのが発見された」というニュースを、米国のR&B愛好家のブログを通じて知ることになった。享年58歳、永く喘息を患っていたという。
カシーフといえば、80年代における「Black Contemporary」(通称:ブラコン) と呼ばれたカテゴリーにおいて、まさに世界を席巻した感のあるスーパープロデューサーであり、クリエイターであり、同時にシンガー・ソング・ライターでもあった。すでに他界した歌姫「Whitney Houston」(ホイットニー・ヒューストン)のあれだけの成功も、メジャーデビュー当時の彼の力と関与がなければ成し得なかったほどだ。後に台頭してくるカテゴリーの New Jack Swing(ニュー・ジャック・スウィング)の大波が押し寄せてくるまでは、当時キラ星のごとく都会的で洗練されたシセサイザーを多用した独自のサウンドで、まさに時代の最先端を独走していたと言っても誰も否定することはできないだろう。
彼の作品やアルバムはほぼすべて所有していて、アルバムごとに思い入れも強い。ただ一番記憶に鮮明なのは、今では音楽ブログとなってしまったこのブログの源泉となる、僕自身が創り出した最愛のお店『cafe Mellows』の閉店直前に行った最初で最後のイベント「一夜限りの Open Cafe」でのこと。当日夕方店を開ける前から寒い中待ってくださった沢山のお客さんをお迎えするにあたり、ブログ上で紹介してきた多数の楽曲をメインに当日だけのプレイ・リストを編集したものの、オープニングにどの曲を流すべきか悩みに悩んだ末に最終的に選択したのが、全盛期からしばしのブランクをおきリリースされたカシーフの楽曲だった。
KASHIF / “Lay You Down” – (album: Who Loves You? – 1998)
ミディアム・テンポでとびきりメロウな “Lay You Down” は、期待通りその日の夜のイベントのオープニングを華やかに飾ってくれた。店内に入ってくる一人ひとりのお客さんたちの高揚した表情が、ちょうど4年が経過した今でも忘れることができない。(過去記事参照)
店内は満席で、常連さんは皆一様に寒いテラスで小さなストーブを頼りに暖を取らねばならぬほどの、北風の吹く寒い夜だったのを、写真家の先生のブログ記事を見て懐かしく思い出すことができた。
素敵な多くの作品を我々に届けてくれたカシーフだったけれど、現代における彼の復活を見届けてみたかった。孤児としてニューヨークで育った彼が、誰にあてて書いた作品なのかは定かではないけれど、彼の残した最高のバラッド『Send Me Your Love』を聴きながら、ご冥福をお祈りしたいと思う。
Kashif / “Send Me Your Love” – (album: Send Me Your Love – 1984)
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KASHIF
(“KASHIF” – 1983 / “SEND ME YOUR LOVE” – 1984)
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KASHIF
(album: Who Loves You ? – 1998)