久しぶりの雨模様だ。雨の中を運転するのは昔から嫌いじゃない。理由は単純で、次々と流れては消えてゆく窓ガラス越しの風景をぼんやり眺めているのが、ただ好きだから。なぜだか同じはずの風景が、晴れた日のそれとはまったく違って見えたりする。そこに好きな音楽と淹れたての珈琲でもあったなら、もはや不足しているものは何もない。
職場へ向かう途中、車のiPodで『雨』に相応しい曲を探そうとしたけれど、こんな雨の日には自分にとっては日常的な行為なので、「ちょっとつまんないな」と思い直し、正反対の曲を探す。
「そうだ、あれしかないよね。」と自分に言い聞かせるようにして、古い Bobby Caldwell (ボビー・コールドウェル)の曲を検索する。
“Sunny Hills”
タイトルは太陽で眩いイメージだけど、実際は米国マイアミで過ごす、比較的裕福な白人層のリタイア後の老人たちの日々の暮らしや人生をすこし哀しげに歌っている内容の、なんとも表現が難しい印象の作品だ。多くのミュージシャンが尊敬し、僕も偏愛する 『Steely Dan』から多大な影響を受けたと本人も後に語っている、もうリリースされてから30年も経ってしまう名曲中の名曲だ。
かつて一度だけ訪れたことのある、マイアミのビーチ沿いに所狭しと林立する、リタイアした世代の人々が集うコンドミニアムのエントランス付近では、デッキチェアに横たわり気怠い陽光を浴びながら、何をする訳でもなく一日をやり過ごす人々が余りに多いその光景は、ある意味当時20代の僕には驚きを隠せなかった。
Bobby Caldwell / “Sunny Hills” (album: Carry On – 1982)
アルバムのバックを固めたミュージシャンは『TOTO』の面々。悪い訳がない。
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Bobby Caldwell
(album: Carry On – 1982)