波に乗ると結構筆が止まらないようなところがありまして、間髪入れずに「秋の恒例企画」の第4弾です。
僕の認識が間違っていなければ、80年代後半にピークを迎えていた都会的で洗練されたアレンジの「ブラック・コンテンポラリー・ミュージック」の世界的なムーブメントの最終段階での牽引役を担っていたのが、NYでポール・ローレンスが率いていた「Hush Productions (ハッシュ・プロダクション)」に所属していた多くのいわゆる「ハッシュ系」と呼ばれたアーティストたちでした。
“Rock Me Tonight” でいきなりスターダムにのし上がったフレディ・ジャクソンを筆頭に、リロ・トーマスやメルバ・ムーアといった一時代を築いたアーティストたちとともに大きく「ハッシュ」の発展に貢献したのが、メリッサ・モーガン(Meli’sa Morgan)でした。「ハッシュ系」アーティストたちのそのきらびやかで洗練されたサウンドは、「クワイエット・ストーム(Quiet Storm)」とか「スロウ・ジャム(Slow Jams)」と呼ばれる流れを生み出し、その後90年代から表舞台から姿を消す要因となる「Hip-Hop」や「New Jack Swing」といった新たなカテゴリーに立場を奪われるまでは、一世風靡したような感さえあったものでした。
今回ご紹介する “Do Me Baby” については、オリジナルはあの「プリンス(Prince)」による作品というのは有名な話ですが、メリッサ・モーガン(Meli’sa Morgan)は当時のハッシュ専属の腕利きミュージシャンたちと共に、シンプルでファンク色が強くしかしとびきり美しいメロディが印象的だったプリンスのオリジナル作品を、アレンジで楽曲をさらに味わい深いものに昇華させ、彼女のパワフルで伸びがあってしかもエモーショナルなヴォーカルでカヴァーすることに成功しました。
Meli’sa Morgan / “Do Me Baby” (album: Do Me Baby – 1985)
ざっくりとですが1990年代以降、決して否定するわけではないのだけれど新たに台頭してきたラップやHip-Hop系のサウンドが、「本来メロウであるべき」と僕自身は認識している黒人音楽の分野でメイン・ストリームを張るようになって久しいのですが、それでもやはり時代は美しく叙情的なサウンドやメロディをずっと欲していたようです。ずっと待たれていた彼女の本作も Expanded Edition としてCDで復刻されるなど、かつてのハッシュ系だけでなく80年代に活躍したベテラン・アーティストたちが、ここ2・3年くらい新作を発表するようになってきています。これはとてもよい傾向だと思います。ほんとに楽しみです。
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Meli’sa Morgan
(album: Do Me Baby – 1985)