かつて営業していたお店の名前にちなんで、Mellow な作品を数多くご紹介してきたシリーズ『Mellow Tunes』で作品を取り上げる際、「いい作品なんだけど、メロウというよりはちょっと・・」とためらってしまうような音楽の数々が、これまでも山のように存在していました。この新しいシリーズでは、そんな「宝の山」の中から我々と同世代の『大人が聴いてリラックスできるような、大人のための作品』を紹介していきたいと考えています。そこはかつての実店舗 “cafe Mellows” の経営方針とまったく変わりはありません。もちろん『Mellow Tunes』は継続しますが、そこで取り上げないような作品を意図的にチョイスしていこうと思っていますので、楽しみにしていただければ幸いです。
新シリーズ “AC Tunes” の初回は、もう3年も続けてるこの音楽主体のブログでもたった一度しか過去記事でも取り上げていなかった、僕の最も敬愛するアーティストと言っても過言ではない Donald Fagen(ドナルド・フェイゲン)に登場していただくことにしました。
Donald Fagen / “I.G.Y.” (album: The Nightfly – 1982)
僕と同じ位のR50世代の音楽好きなブログ・リーダーの方々であれば、彼がかつて伝説のバンド『Steely Dan(スティーリー・ダン)』のリーダーであったことは皆さんご存知の通りです。バンドというよりも「コンビ」という表現が適当であり相方の Walter Becker(ウォルター・ベッカー)と共に、アルバム中の一曲ごとに超一流のミュージシャンを複数起用し、収録予定の何倍もの作品を準備し更にいくつものTakeをレコーディングして、最終的に納得のいった曲とTakeだけを作品としてリリースするという手法で成立していた奇妙なユニットでした。当時の彼らによれば「ライブは再現不可能」なため、「スタジオ・ワーク」だけがすべてであり、所属のレコード会社にとっては途方もない「費用と時間」がエンドレスに掛かる音作りをしていることでも有名な、事実上「二人組み」のユニット、それが『Steely Dan(スティーリー・ダン)』の実態でした。かなりJazzに傾倒した音作りの彼らの作品は、RockだとかPopsだとかそんなジャンルやカテゴリーを完全に超越して、『Steely Dan の音楽』として固有の価値を持って成立していました。
1980年にアルバム『Gaucho』のリリース後に Steely Dan の活動を休止した Donald Fagen が、ソロ・アルバム第一弾として2年後の1982年に世に放ち『20世紀のAORの金字塔』とまでも絶賛されつつ今日に至るのが、今回ご紹介するアルバム『The Nightfly』であり、収録曲中最大のヒットとなったのが『I.G.Y.』です。
(本作品は当時のレコーディング技術の「教本」のような最高水準の音作りとなっており、録音から30年以上が経過した今でも休日のアキバのヨドバシ・カメラの高級オーディオ売り場のあちこちで、このCDやアナログ盤を自宅から持参して「音質」をチェックしている人をかなり見かけます。僕も実店舗に導入する機材を選択するときに、ヨドバシのスピーカー売り場でこのCDを持参してきたお客さんと偶然鉢合わせしましたから。それくらいの当時の録音・エンジニアの持てる最高レベルの技術を惜しみなく投入した作品としても有名です。)
彼らの記事をこれまで書かなかった理由は、「書き出したらもう止まらない」からにほかなりません。それくらい、僕にとってのアイドルなのです。まるでJazzのような複雑なコード進行とちょっと難解でシニカルなリリック(詞)と、完璧なまでに研ぎ澄まされた「音のつぶて」で満たされたそれぞれの楽曲のクォリティは、他のアーティストの追随を許すことはありませんでした。それは活動休止から20年の歳月を隔て2000年に活動を再開した以降に発表された Steely Dan 名義としてのアルバムや Donald Fagen 自身のソロ・アルバムにおいても、その魅力や質の高さは変わることなく、60代後半に入った現在でも衰えることなく同世代はもちろん若い世代にも大きな影響を与えているようです。
このまま書いていくと、これまでの3年分くらいの記事を書いてしまいそうなので、そろそろこの辺で止めときます。(笑) もうこの後はいつもの「ウィキペディア」 さんにお任せするといたします。興味をもたれた方は、英語版の Wikipedia サイトの方がずっと詳しく紹介してますので、ブラウザの翻訳機能や「YouTube」などをうまく活用して色々と調べてみてください。Steely Dan については、一体どれほどになるか見当もつきませんがまた近いうちに記事をUPいたしましょう。