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さて明日は夏至を迎えるそうで、ここ数日はちょっと「梅雨の中休み」という感じでしょうか。これからやってくる暑い季節が苦手なので、僕にとっては夏は例年耐え忍ぶ季節となります。
車のナビに接続されたままの愛用の「iPod Classic」のホイールをくるくると回していたら、なんだか偶然にこの曲を選びました。
今回ご紹介する英国はウェールズ出身のバンド「Stereophonics」の代表曲でもある『Maybe Tomorrow』は、2005年度のアカデミー賞における作品賞を受賞した米国映画『CRASH』のラストシーンからエンド・ロールを飾る、大変心が揺さぶられる楽曲です。
この映画、国家がほぼ単一の民族で成り立っている日本では、「ほとんど理解されないのでは」といった危惧が映画配給会社にもあったようで、事実大半の日本人が見ていないだろうと思われる、オスカー受賞作品の一つなのではないでしょうか。
本作品は「人種のるつぼ」と表現される米国における様々な人種が交錯する群像劇で、日本国内に居住していては想像もできないような「人種の壁」や「宗教観」そして「偏見」が緻密に描かれております。特定の主人公は設定していなくて、いわゆるグランドホテル形式で作品は展開していきます。
過去にも多くの映画が存在しますが、白人と黒人の主従の関係を描いた過去の歴史モノとは異なり、雑多な移民で成り立つ現代の「アメリカ合衆国」という国家における身近で根深い問題を、この作品は見事に炙り出して見せています。西海岸のLAに居住する、白人と黒人はもとより日系・韓国系・中国系・ヒスパニック系・不法入国の難民たち、そして「9.11」以降誤解を受け易いアラブ系も含め、そこにはお互いを理解できない、しようとしない多種多様な登場人物の仕事や家族関係等が緻密に描写されています。一つの車の衝突事故を起点として、人々の偏見から生まれる「衝突 = CRASH」を描いており、その一方で多角的に物事を見ることで、その差別や偏見が変わることを伝えようと、この作品の脚本・制作・監督のすべてを担当した「ポール・ハギス」は訴えています。
個人的には、獲得後10年が経過する本作品を超えるオスカーの作品賞受賞映画には、まだ出会えていないと言えるくらい、衝撃と感動そして魂を揺さぶられた作品でした。
同じ島国でも多民族化が進んでいる「英国」と違い、ほぼ単一民族で構成された島国である「日本」に居住していると、なかなか理解できない「テロリズム」の根源について考るきっかけとなる作品とも言えるでしょう。また同時に、僕個人としては納得がいきませんが、是非はともかく現大統領が選出された背景にも、こうした根の深い感情や現実が存在しているという背景を、くっきりと浮き彫りにした貴重な作品だと考えられます。
“CRASH” Movie Trailer
Maybe Tomorrow (Stereophonics) “Crash” Movie Soundtrack
カリフォルニア南部に位置する都市や沿岸部では降るはずのない雪が、クリスマスの夜のLAの街に降りしきる感動的なラストで、朗々と流れ出す『Maybe Tomorrow』の「たぶん明日は、自分の居場所がみつかるだろう」と自分自身に言い聞かせるような「So maybe tommorow, I’ll find my way home ~」というサビのフレーズと、ラストシーンのマッチングがあまりに秀悦で、最初に見た時は感動の余りDVDを何度も観返すことになりました。
監督のポール・ハギスが描き出す社会性の高いテーマと作品の完成度の高さ故に、もっと沢山の人たちに観てもらいたい映画です。ご覧になっていない方は、機会があればぜひ一度鑑賞してみてください。
本年度(2016)のアカデミー賞作品賞を逃したものの、大半の賞を総なめした、同じ「LA」を舞台とする『La La Land』が夢や希望・挫折を織り交ぜながらもファンタジックなミュージカル仕立ての世界を描いたような作品とは、明らかに対極に位置する作品ではありますが、米国という大国の「光と影」を見るようで、良くも悪くも感慨深いものがあります。