Mellow Tunes ~ Vol.12 【比較論】

※久々に長編の音楽ネタとなりますので、ご注意下さい。 遠慮なく読み飛ばしていただいていいんですよ。(笑)

今年でもう84歳と、齢を重ねた天才メロディ・メーカーの Burt Bacharach(バート・バカラック)は、POPS はもちろん JAZZ のカテゴリーでも、ものすごい実績を持つ非常に稀有な音楽家(作曲家、編曲家、プロデュサー等々)として知られているのは、もはや有名なお話。そうですね、身近なアーティストで言えば、The Carpenters (カーペンターズ)なども取り上げたあの名曲「(They Long to Be) Close to You」の作曲者といえば分かりやすいでしょうか。

バカラックの作品は、世界的に見てもどの楽曲も普遍的な「スタンダード」なナンバーとして昇華しており、彼の音楽をカテゴライズ、つまりジャンル分けする際、POPS とも JAZZ とも区別できない、いわゆる「バカラックのメロディ」としか形容できない作品が多いと、僕自身は考えています。

そんな彼が次々に産み出した多くの名曲の中に、「The Look of Love」という作品があります。もともとは、英国出身の白人女性ソウルシンガーである Dusty Springfield (ダスティ・スプリングフィールド)に書き下ろした曲だとされていますが、現在に至るまで、どちらかというと Jazz のフィールドの多くのアーティストたちに、数え切れないほどカヴァーされ続けている楽曲です。

今回、三組のアーティストによる、それぞれの解釈でアレンジされた「The Look of Love」を、比較しながら聴いてもらいたいと思っています。

まずは正統派で、ルックス、ヴォーカル、ピアノのテクニックに至るまで非の打ちどころがないと言われる現代の JAZZ の歌姫、「Diana Krall (ダイアナ・クラール)」の、とっても Jazzy で大人な編曲の作品です。彼女のご主人があの「エルビス・コステロ」であることは有名ですが、先日ポール・マッカートニーが世に送り出した話題の JAZZ アルバム作品『Kisses On The Bottom』でも、彼女がピアノとバック・コーラスで参加していたことでもわかるように、その実力は折り紙つきです。僕は数年前に、彼女のアルバムを会社の後輩から教えてもらい、「ジュリー・ロンドンの生まれ変わりじゃないか!」と思わず叫んだくらい、ジュリー以来のハスキーな魅惑的なヴォーカルに驚いたことをはっきりと憶えています。


Diana Krall / “The Look of Love” (album: The Look of Love – 2001)

 

さてお次は、以前にもブログで一度紹介したことのある 「Chris Botti (クリス・ボッティ)」というジャズ・トランペッターがいますが、彼が2009年にボストンで行った、それはそれは錚々たる超大物ゲスト・ミュージシャンの数々とコラボレーションした一夜限りのライブの中で披露された、「The Look of Love」です。実は彼はこの楽曲をたいそう好んでいるようで、過去にも数人のゲストを招いてアルバムに残しているくらいなんですね。そして今回のゲスト・ヴォーカリストとして迎えられたのは、「Sy Smith (サイ・スミス)」という R&B 黒人女性シンガーでした。彼女は、過去に 「The Brand New Heavies」というグループに参加していた時期もあるので、声に聴き覚えのある方もいるかもしれません。
とにもかくにも、R&B系のアーティストが演じるとこうなるといった、まったく印象の異なる作品へと変貌を遂げているのが興味をそそられます。途中、スキャットでクリスのホーンとの掛け合いを演じますが、タイトなリズムとグルーブ感といい、その様が圧巻です。さすがのバカラックも、これには驚いたかもしれません。
参考までに、この曲以外にも素晴らしいコラボレーションの演奏がもうてんこ盛りですので、CDとDVDがセットになってるものもありますので、ぜひこのライブ作品はお手にとってご覧になっていただきたいものです。


Chris Botti (feat. Sy Smith) / “The Look of Love” (album: Chris Botti in Boston – 2009)

 

そして最後にご紹介するのが、バート・バカラック本人と、あの Soul / R&B 界の重鎮、Isley Brothers の Ronald Isley (ロナルド・アイズレー)がコラボレーションして世に送り出された奇跡のアルバム、「Here I Am: Ron Isley Sings Burt Bacharach」から、バカラック本人がピアノを弾き、ロンがバカラック・メロディの数々を切々と謳い上げるといった、まさにお宝的な内容のアルバムとなっております。この作品に中では、前述の The Carpenters (カーペンターズ)なども取り上げたあの名曲「(They Long to Be) Close to You」なども演じておりますので、要チェックですよ。
しかしまあ、シルクのような肌触りとでも表現するしかないような、Smooth なヴォーカルと編曲に脱帽ものです。本当に「宝物」のような二人です。


Ronald Isley/Burt Bacharach / “The Look of Love”
(album: Here I Am: Ron Isley Sings Burt Bacharach – 2003)

さてさて、久々に長編の Mellow Tunes でしたが、どんなに忙しくても、やっぱり音楽ネタは別なんですねぇ。
好きこそ物の何とやらとは言いますが、そんなものなのかもしれません。

※コメントなど頂戴できると嬉しく思います。よろしくお願いします。

 

 

 

Rainy Days in Mellows ~ Vol.1 【雨の日通信】
Rainy Days in Mellows ~ Vol.2

2 Responses to Mellow Tunes ~ Vol.12 【比較論】

  1. ジャンルカ より:

    最近ご無沙汰してすみません。

    さて、バート・バカラックは大好きなアーティストのうちのひとりです。
    彼の作る音楽はジャンルにとらわれないグッド・ミュージックとしていつまでも語り継がれるのではないでしょうかね。(日本人はジャンル分け大好きですね)

    バート・バカラックというお方は、いわゆるイージーリスニングというジャンルの人だと思うと大違いで、なぜかロック、ポップス界のプロのミュージシャンの中にも信奉者が多いというのは、彼の類まれな作曲能力というか聴く者に対して心にじんわりと染み込んでくるような楽器の特徴を考えたアレンジ能力の成せる技なのではないでしょうか。

    まったくといって良いほどイージーリスニング的な音楽を積極的に好んで聴いてこなかった僕にとって、彼の都会的でスパイスの効いた音楽センスは音楽を聴く上での基本的な楽しさとか喜びとかを素直に感じさせてくれたし、さりげなく音楽への想いをくすぐってくれた数少ないミュージシャンのひとりであると思ってます。

    彼の日本公演を収録したLPとCDは今でも愛聴盤です。
    そして、”The Look Of Love”をクリス・ボッティがとりあげているというのもうれしい限りです。(マスター、おかげさまで今クリス・ボッティにはまってますよ)”Walk On By”、”Alfie”、”Raindrops Keep Fallin’ On My Head”、そして”I’ll Never Fall In Love Again”などなど、み~んな大好きな曲ばかりです。

  2. Master より:

    ジャンルカさん
    買出しやら仕込みで深夜になってしまい、返信遅くなりすみません。
    ところで、素晴らしいコメントありがとうございます。
    さすが『御意見番』のコメントで、頷くことばかりです。
    クリス・ボッティは、世界的に見ても20年前と比べると明らかに下火になってしまった Jazz 界を背負って立つ、アイコン的な存在です。あらゆる分野のアーティストとのコラボを通じて、改めてジャズやスタンダードの持つ魅力を、世に知らしめようという彼なりの努力や意図が、はっきり見てとれます。とにかく頑張って欲しい、素晴らしいアーティストであり、ジャズ界の救世主だと僕は思っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です