天気もそうですが体調もいまいち安定しないので、こんな時の音楽の選択には結構神経質になったりもすることがあるんですが、なんだかそんな時に聴くと落ち着くアーティストがいたりします。
Donald Fagen(ドナルド・フェイゲン)なんかも、僕にとっては昔からそんな存在のアーティストの一人です。彼については、相棒のWalter Becker(ウォルター・ベッカー)との母体ユニットである「Steely Dan(スティーリー・ダン)」のことも含めて過去に記事をいくつかUPしてますので、詳細は割愛いたします。(ご興味ある方はこちらへどうぞ)
過去にリリースされたドナルド・フェイゲン名義の4作のソロ・アルバムにはそれぞれ、独自のテーマがあって、今回紹介する2006年にリリースされた3作目のアルバム『Morph the Cat』は、2001年に発生したアメリカ同時多発テロ事件だとか、フェイゲン氏の実母の死等を経験した後に発表された本作品は、「老年期における沈思と死」がテーマとなっているものです。1982年にリリースされた「ROCK/POPSの金字塔」と賞賛されて久しい1stソロ・アルバム『The Nightfly』が、若者による視点から見た、米国および危ういバランスで成立していた当時の国際情勢を鋭く描写したシニカルな作品が並んでいたのとは、かなり対照的な作品となっているのが特徴的と言えるでしょうか。当然のことながら、セールス面でも過去の4作品の中で、米国含め世界中のセールス・チャートでも10位台に入らなかった唯一のアルバムとなりました。
11年前の『Morph the Cat』リリース時は、収録作品の雰囲気や内容も含め「ちょっと暗いな‥」と思ったものですが、いざ自分が50代半ばを折り返す時期に入って聴くこのアルバムは、自分もいろんな経験を積んだことで、なんだかとても共鳴するというかフェイゲン氏の表現したいことが分かって来たような気がします。
今回取り上げる『The Great Pagoda of Funn』は、「7分39秒」という長さの大作で、同アルバムの中でも突出した出来の楽曲だと思います。Lyricに関しては、いつも同様に大変抽象的で難解のため省略しますが、トランペットのソロを吹く「Marvin Stamm」、そして後半圧巻のギター・ソロを披露した「Wayne Krantz」といった自身の楽曲の特徴に合わせたミュージシャンの選定に、まさに目利きであるフェイゲン氏の真骨頂を見せつけられます。
Donald Fagen – The Great Pagoda of Funn
(album: Morph the Cat – 2006)