すこし前のことですが、僕のブログ内でも何度か記事で取り上げました作家・森沢明夫氏による小説『虹の岬の喫茶店』を原作とした映画、『ふしぎな岬の物語』をひとり映画館で鑑賞してきました。
久しぶりの大スクリーンでの映画鑑賞ということもあり、今回主演と製作プロデューサーを兼任することになった吉永小百合さんのぐっと抑えた素晴らしい演技に引き込まれ、映画の冒頭から最後までずっと鼻水をすすりながら鑑賞することになりました。
撮影用のセットとはいえ、実在の喫茶店を舞台に登場するそれぞれの人物の人生を描いたある意味「群像劇」を演出する場としてのそのお店の佇まいは、それはそれは居心地のよさそうな空間を実現していたように思えました。まさに「あったらいいな」って思えるカウンター席とテーブル席の絶妙なバランスで、女主人が独りで切り盛りするのには理想的な空間と、僕の目には映りました。
映画の内容は原作とは若干の違いはあれど、僕にとってはハートがじんわりと温かくなる最高の日本映画作品として、しっかりと心に刻まれたのは言うまでもありません。そして同時に、自分自身の失ってしまったものの大きさを再認識させられたのも、隠すことのできない事実でした。そんななんとも言えない複雑な心境で、あいにくなかなか今日まで記事にできませんでした。
映画『ふしぎな岬の物語』は、営業当時お世話になったお客様や関連業者の皆様にも、ぜひ鑑賞していただきたい作品なので、DVD化されたらすぐにでもご覧ください。
「いい人生には、いい喫茶店が傍らに存在する」ということがお分かりいただけることと思います。
早いもので、Mellows をclose してから今日で二年という時間が経過しました。
閉店当日の最後のお客様となった写真家の先生が店の扉を閉じた直後に切り撮ってくださった上の写真の瞬間から、僕の心の中の時計の針は完全に止まってしまいました。うまく表現することができないのですが、それが本当の気持ちです。
さてそんな僕のほろ苦い思いを代弁してくれるかのような『Bittersweet / You Can’t Go Home Again』が、やけに心に沁みます。もう冬はすぐそこまでやってきているようです。
Charlie Haden & John Taylor / “Bittersweet”
(album: Nightfall – 2004)